研究課題
エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者における薬物療法のスタンダードはホルモン療法であるが、従来のホルモン療法では効果が認められない患者は多い。本研究の目的は、ER陽性乳がんにおける新規バイオマーカーおよび創薬ターゲットの確立を目指し、ER陽性乳がん細胞におけるエストロゲン前駆体の取り込みと、がん細胞の増殖との関連性について明らかにすることである。昨年度、ER陽性乳がん細胞におけるorganic anion transporting polypeptide(OATP、SLCO)2B1の発現が、エストロゲンの前駆体であるエストロン硫酸(E1S)の取り込みや、がんの悪性度に関わることが示唆された。本年度の目的は、ER陽性乳がん細胞におけるエストロゲン前駆体の取り込みと、がん細胞の増殖に関する更なる根拠を得ることである。まず、ER陽性乳がんにおけるエストロゲン前駆体の取り込みとがんの悪性度との関連性を検討する目的で、ERおよびKi-67発現量の変化について検討したところ、ER陽性乳がん細胞におけるE1Sの取り込みは、ERの発現量を減少させ、一方でKi-67発現量を増加させた。乳がん組織において、ER発現量が低くかつKi-67発現量が高いluminal BタイプにおいてはSLCO2B1 mRNA発現量が高く、その原因として細胞内へのE1S取り込みが考えられた。OATP2B1過剰発現乳がんモデルマウスの構築ではがん細胞がうまく癒着しないことが考えられ、今後も検討が必要である。一方、乳がん組織における他のOATPの発現を検討したところ、SLCO1A2、SLCO3A1およびSLCO1C1 mRNAの発現が認められた。中でもSLCO1A2 mRNA現量は、正常組織と比較しがん組織で有意に高く、OATP2B1以外のOATPも乳がん細胞におけるE1Sの取り込みに関与する可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Drug Metabolism and Pharmacokinetics
巻: 30 ページ: 133-141
doi:10.1016/j.dmpk.2014.10.005