研究課題
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アドレノメデュリン(AM)は、全身の組織で広範に産生され、多彩な生理活性を有するペプチド因子である。これまでに我々は、AMが血管の恒常性維持に必須であることを報告してきた。AMの受容体システムは、Gタンパク共役型受容体であるCLRに、受容体活性調整タンパクであるRAMPが結合し、受容体としての機能が調整されている。RAMP のサブアイソフォームの中でも、RAMP2ノックアウトマウス(RAMP2-/-)のみが、 AM-/-マウスの血管の異常を再現して胎生致死となることから、我々は、RAMP2 がAMの血管における生理機能を制御しており、AM に代わる新たな治療標的分子となる可能性を考えた。本年度の研究では、成体が得られるRAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)、および新たに樹立した血管特異的RAMP2過剰発現トランスジェニックマウス(E-RAMP2Tg)を用いて、血管傷害におけるRAMP2の病態生理学的意義を検討した。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)術後の血管再狭窄の病態モデルとして、マウス大腿動脈内にワイヤーを挿入し、血管内皮の剥離と血管の拡張処理を行い、術後の動脈硬化病変を評価した。RAMP2ヘテロノックアウトマウス(RAMP2+/-)の血管では、野生型マウス(WT)と比較して、RAMP2の発現は半分に低下していた。RAMP2+/-では、ワイヤー傷害後4週間後の新生内膜形成が増悪しており、αSMA陽性の平滑筋細胞数の増加を認めた。一方、E-RMAP2Tgの血管では、RAMP2の発現が約7倍に上昇していた。E-RMAP2TgはWTに比較して新生内膜形成が抑制されており、病変部のマクロファージ浸潤も抑制されていた。更にE-RMAP2Tgの血管では、IL-1β, IL-6などの炎症サイトカインの発現低下と、NADPH oxidaseの発現低下を認めた。
2: おおむね順調に進展している
薬剤誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2遺伝子欠損(DI-E-RAMP2-/-)マウス、血管特異的RAMP2過剰発現(E-RAMP2 Tg)マウスラインについては計画通りに作出された。後者についてはワイヤー傷害による動脈硬化病変の評価が進展した。前者については、血管のRAMP2発現が20%程度まで低下することが確認できており、現在解析を進めている。マウスラインの樹立の関係から、初年度と次年度の研究計画が一部前後したが、全体としては概ね当初の計画通り進展している。
DI-E-RAMP2-/-について、血管のワイヤー傷害による術後動脈硬化病変の評価を進める。また粥状動脈硬化病変へのRAMP2の関与を評価するため、DI-E-RAMP2-/-とApoE-/-のダブルノックアウトマウスラインの作出を進める。更に本年度の研究により、解析が先行しているRAMP2+/-を用いて、骨髄移植(BMT)とワイヤー傷害実験を行い、骨髄由来細胞の血管傷害病変への関与を検討する計画である。
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