研究課題
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Bone Morphogenetic Protein (BMP) は、異所性骨化や生理的骨形成に重要なサイトカインである。BMPの活性は、受容体を介し転写因子Smadによって伝達されることが知られている。本研究では、構成的活性型Smadを構築しBMP シグナルの分子メカニズムの解明を行った。BMPシグナルを伝達するSmadは、相同性の高いSmad1, Smad5およびSmad8が知られている。構成的活性型Smad1/5/8を構築しC2C12細胞に過剰発現させBMP特異的なルシフェラーゼ・レポーターアッセイと、骨芽細胞の分化指標であるALP活性の測定を行った。すると、Smad8は、Smad1あるいはSmad5に比べBMP活性が著しく低い事がわかった。Smad8の機能を検討すると抑制型SmadであるSmad6やSmad7と同様に短時間のBMP処理でmRNAレベルが増加した。さらに、C2C12細胞にSmad8を過剰発現させBMP処理すると抑制型Smad同様にBMP活性を抑制した。また、内在性のSmad8をノックダウンすることでBMP活性が上昇する事がわかった。そこで、Smad8のDNA結合能及びタンパク結合を検討すると、BMPシグナルに対する抑制効果の作用点は、シグナル伝達型のSmadに直接作用すると考えられた。以上の結果より、Smad8がネガティブフィードバックを形成する因子である事が示唆された。現在、より詳細な分子メカニズムを生化学的、分子生物学的に検討中である。また、組織学的な手法を用いてin vivoにおけるSmad8の生物活性について解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度には、構成的活性型変異体を用いてSmad8の分子メカニズムを解析する事を計画した。BMP特異的なレポーターアッセイ、免疫沈降―ウエスタンブロット、DNAプルダウンアッセイ等の分子生物学的手法を駆使しSmad8による新規のBMPシグナル調節機構を解明する事に成功した。また、その作用機序はシグナル伝達型のSmadに直接作用する新規のメカニズムである事が判明した。BMP処理によってSmad8 mRNAの発現が増加する事がわかったため、Smad8のプロモーター解析を試みた。しかし、Smad8上流のプロモータ配列をPCR法でクローニングしたが、BMP応答領域は存在しなかった。この結果は、BMP応答性に発現するSmad8が、特殊な発現制御によって調節されている可能性を示唆する。
平成25年度のin vitroの実験からSmad8によるBMPシグナル抑制機構の作用機序について明らかにする事ができた。平成26年度は、その新規の機構で働く制御因子を探索しより詳細な分子メカニズムを明らかにする事を計画している。また、平行してin vivoにおける生理的なSmad8の役割について解析を行う。平成25年度の実験結果からSmad8がシグナル伝達型のSmadに直接作用している事が考えられるため、Smad経路のco-activatorあるいは、co-repressorに対するSmad8の直接の作用を免疫沈降―ウエスタンブロット法あるいはtwo-hybrid法を用いて検討する。さらに、in situ hybridization法で、マウス組織切片を用いて、Smad8 mRNAの発現部位、発現細胞について解析する。特に、骨形成とSmad8発現の関連に着目して実験を行う予定である。
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FEBS letters.
巻: 14 ページ: 614-619
10.1016/j.febslet.2013.12.031
実験医学 (増刊)
巻: 32 ページ: 1010-1016