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2013 年度 実績報告書

バクテロイデスがもつ滑走・分泌装置の3次元ダイナミクス

研究課題

研究課題/領域番号 25893230
研究種目

研究活動スタート支援

研究機関学習院大学

研究代表者

中根 大介  学習院大学, 理学部, 助教 (40708997)

研究期間 (年度) 2013-08-30 – 2015-03-31
キーワード滑走運動 / 分泌装置 / バクテリア / らせん / 3次元 / 光学顕微鏡 / 分子モーター
研究概要

私たちは、バクテロイデスがもつ滑走・分泌装置の全容解明を目指して研究している。バクテリアの1グループであるBacteroidetes属は、海中・土壌・体内、様々な環境に広く分布している。これらの多くは、滑走運動と呼ばれる、表面上を動く能力があるが、そのメカニズムは、既知の生体運動とは根本的に異なっており、全く新しい装置の存在が示唆されている。本年度は、滑走装置の構造や挙動を『可視化』することで、このメカニズムを新しいアプローチで明らかにした。
最も速く滑走するBacteroidetesである Flavobacterium johnsoniae において、SprBという外膜タンパク質に注目して研究を進め、以下の結果を得た。1.SprBは固形物表面への接着をになうアドヘジンとしての機能をもつ。2.このタンパク質を蛍光標識すると、菌体の膜表面上を高速で動いているのを可視化できた。これは、菌体の極から極へと、約3 ミクロンのピッチをもつ、左巻きらせんに沿った動きだった。3.このらせんの流れは、プロトン駆動力の阻害剤によって可逆的に停止し、同時に菌体の滑走運動も停止した。4.このらせん流をもちいて、菌体が表面上を滑走運動するとき、左に曲がる傾向があった。5.らせん状に流れているSprBは、細くて硬い150 nmの繊維状の分子形状をとっており、膜から固形物表面に向かって、突き出していた。6.繊維状のタンパク質が左巻きのらせんに流れるとき、左に曲がる滑走運動が生じることを数学的に検証し、評価した。
これらの成果により、未知の生体運動であったバクテロイデスの滑走運動は、左巻きのらせん流によって生じるユニークなメカニズムであることを示した。運動装置は、バクテロイデスの病原毒素分泌装置と類似性があるので、そのメカニズムを解明する上でも、重要な知見といえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

滑走運動のメカニズムが解明されつつある。これは、顕微鏡による可視化技術の発展、分子生物学的な変異体・抗体リソースの充実、数学的な運動モデル構築、それぞれが融合することで、学際的な研究が展開したことによる。当初の研究目的を達成しており、今後の研究目的であるタンパク質分泌メカニズムを明らかにする上でも、有用な成果が得られている。当該年度には,米国科学アカデミー紀要誌に,筆頭著者となる論文を掲載することができ,バクテリアの生体運動メカニズムと,その多様性という観点から,インパクトを与えることが出来たのではないかと考えている.また,運動のモデルに関する論文も,物理学の専門誌としてはもっとも権威のあるPhysical Reviews Letter誌に共著で論文を掲載することができ,細菌学にとどまらず,多角的なアプローチで研究を展開することが出来ている.

今後の研究の推進方策

今後は、滑走装置だけでなく、進化的に同じ起源であると予測されている、分泌装置にも注目して、タンパク質輸送の過程を可視化する顕微鏡の開発に着手する。滑走装置のふるまいについては、今回の我々の行った研究で、ある程度の答えを見つけられたが、一方で、装置の全体像について、ナノオーダー以上の構造学的知見が得られていないことが、更なる研究の進展を妨げているようにも思える。滑走・分泌装置の複合体としての構造を電子顕微鏡や原子間力顕微鏡をもちいて可視化するというアプローチでも研究を展開させる。これらと光学顕微鏡による計測技術を上手く組み合わせた形で、研究を発展するような、長期的な視点を持って、同時に研究を進めてゆく。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Helical flow of surface protein required for bacterial gliding motility2013

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Nakane, Keiko Sato, Hirofumi Wada, Mark J. McBride, and Koji Nakayama
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 110 ページ: 11145-11150

    • DOI

      10.1073/pnas.1219753110

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bidirectional Bacterial Gliding Motility Powered by the Collective Transport2013

    • 著者名/発表者名
      Hirofumi Wada, Daisuke Nakane, and Hsuan-Yi Chen
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 111 ページ: 248102

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.111.248102

    • 査読あり
  • [学会発表] 戦車のような仕組みで動くバクテリア2014

    • 著者名/発表者名
      中根大介
    • 学会等名
      日本農芸化学会 2014年度大会
    • 発表場所
      神奈川
    • 年月日
      20140328-20140330
    • 招待講演
  • [学会発表] 戦車のような仕組みで動くバクテリア2014

    • 著者名/発表者名
      中根大介、佐藤啓子、中山浩次、西坂崇之
    • 学会等名
      第87回 日本細菌学会 総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] 滑走するバクテリアがつくる巨大渦パターン2014

    • 著者名/発表者名
      中根大介、小高祥子、西坂崇之
    • 学会等名
      2013年度 べん毛交流会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20140301-20140303
  • [学会発表] 戦車のような仕組みで動くバクテリア2013

    • 著者名/発表者名
      中根大介、佐藤啓子、和田浩史、Mark J. McBride、中山浩次、西坂崇之
    • 学会等名
      第29回 日本微生物生態学会 大会
    • 発表場所
      鹿児島
    • 年月日
      20131123-20131125
  • [図書] Mollicutes: Molecular Biology and Pathogenesis2014

    • 著者名/発表者名
      Makoto Miyata and Daisuke Nakane
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      Horizon Press
  • [備考] バクテリアの滑走運動のメカニズムの解明

    • URL

      http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/info/science/science56.html

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公開日: 2015-05-28  

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