研究課題/領域番号 |
25893237
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
河尻 澄宏 順天堂大学, 医学部, 助教 (30445522)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / ミトコンドリア |
研究概要 |
パーキンソン病(以下PD)の原因遺伝子とミトコンドリア分裂・融合メカニズムとの関与を明らかにするために、ヒト由来培養細胞であるHeLa細胞に、原因遺伝子の野生型のプラスミドをトランスフェクションし過剰発現させた後、ミトコンドリアをmitotrackerで染色し、蛍光顕微鏡を用いたライブイメージングによりミトコンドリアの形態を観察し、定量評価 (normal, tubular, fragmentedにわけて細胞を300個以上観察する) を行った。原因遺伝子は当初、α-synucleinやLRRK2などの頻度の高い原因遺伝子を優先的に行う予定であったが、既にそれらの関連については論文化されてきた状況であったため、まだ報告のない原因遺伝子(FBXO7、VPS35、PLA2G6、GBA、ATP13A2遺伝子)のプラスミドを用いて行った。まず、これらのプラスミドの至適条件を検討するために、事前にプラスミドをHeLa細胞に過剰発現し、免疫染色法によりトランスフェクション効率を検討したが、GBA以外は問題なく効率のよい良好な条件であったが、GBAはバックグラウンドが高く、プラスミドの量を少なくするなどして対策した。すべての遺伝子の至適条件下での結果としては、すべての遺伝子の過剰発現で明らかなミトコンドリアの形態変化は観察できなかった。 当研究期間中にロテノン(ミトコンドリアのcomplexIを阻害し、fragment化させる薬剤)の投与早期から速やかにオートファジーが誘導されることを示唆する結果が見られたため、このことについても詳しく研究を行った。HeLa細胞にロテノン(0.3μM)を投与し、10分、20分、30分、60分後にわけて内在性のLC3(オートファゴゾームマーカー)とLAMP2(リソソームマーカー)の活動性を蛍光顕微鏡で観察した。結果は10分後からLC3とLAMP2が強く発現するようになり、ロテノン投与後、早期からオートファジー機構が活性化されていることが示唆され今後更なるメカニズムを追及すべきと考えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、平成25年度の研究計画のPD遺伝子過剰発現の一部のみしか行えていない。ノックダウン法を用いた解析ができていないため、Loss of functionで発症していることが推測されている常染色体劣性遺伝形式のPD遺伝子とミトコンドリアの形態との関連は明確には否定できていない状況であるが、過剰発現したすべてのPD遺伝子とミトコンドリアの形態との関連性は示唆されないネガティブデータであった。しかし、研究課題とは厳密には一致しないが、ロテノン投与後早期からオートファジー機構が誘導されていることが示唆される結果を得ることができたことは、最終的にはPDとミトコンドリア形態との関連性をより強固にするものであり大きな進展と考えている。この意味では、おおむね順調に進展していると自己評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後もまずは、当初の予定どおりPD原因遺伝子とミトコンドリアの形態との関連性について取り組む。まだ着手していない原因遺伝子の過剰発現による解析や、常染色体劣性遺伝形式のものについてはノックダウン法を用いた解析を行っていく。ここまででミトコンドリアの形態を生じさせる候補遺伝子が挙がれば、ミトファジーとの関連を明らかにしていくために、ミトコンドリア膜電位低下とparkinのミトコンドリアへの移行との関連について更に調べていく。 また、ロテノンによる早期オートファジー誘導機構の詳細なメカニズムについても新たな研究課題として進めていく。まずはミトコンドリアの形態もロテノン投与早期から生じているかをライブイメージングで観察していく等、様々な角度からアプローチしていく。
|