パーキンソン病 (PD) の原因遺伝子を発症様式から常染色体優性、常染色体劣性、その他、にわけて、ミトコンドリア分裂・融合メカニズムへの関与を検討した。平成25年度にも同様の研究を行っているが、条件検討設定などが困難であり再度行った。常染色体優性遺伝形式で発症する原因遺伝子(α-synuclein、LRRK2、GIGYF2)について培養細胞に、上記原因遺伝子のプラスミドを過剰発現させ、ミトコンドリアを染色後、蛍光顕微鏡を用いてライブイメージングでミトコンドリアの形態を観察し定量評価を行った。すべてにおいて明らかなミトコンドリアの形態変化は見られなかった。次に常染色体劣性遺伝形式で発症する原因遺伝子(DJ-1、ATP13A2、PLA2G6、FBXO7)については、siRNAによるノックダウン法で同様に評価したが、明らかなミトコンドリアの形態変化は見られなかった。遺伝形式が明確でない遺伝子(HtrA2/Omi、NUCKS1、VPS35、EIF4G1、GBA)については過剰発現とノックダウン法の両方を行い評価した。VPS35の過剰発現のみではあるがミトコンドリアの分裂が観察されため、更にミトファジーとの関連を検討した。VPS35の過剰発現によりミトファジーの上流経路であるミトコンドリアの膜電位低下とparkinのミトコンドリアへの移行の有無について評価を行ったが、膜電位の低下およびparkinのミトコンドリアへの移行は見られなかった。 以上から、VPS35がミトコンドリアを分裂させ、分裂・融合のメカニズムに関与することは明らかになったが、ミトファジーとの関連はなかった。VPS35はミトコンドリアの形態調節により機能維持に関わっている可能性があり、ミトコンドリアの形態を介したPD発症メカニズムに関連していることが示唆され今後も引き続き注目する必要があると考えた。
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