アトピー性皮膚炎は炎症性の皮膚疾患であり、先進国を中心に患者数が増加している。アトピー性皮膚炎の治療は早期発見と早期治療(二次予防)が重要であるが、初期の病態を検出できる有効なバイオマーカーは存在しない。そこで本研究では、初期の病態を検出できるバイオマーカーの探索を試みることにした。 昨年度に引き続き、タンパク質中のトリプトファン残基のニトロ化修飾(6-ニトロトリプトファンの生成)を指標として、アトピー性皮膚炎の新規バイオマーカーの探索を行った。その結果、アトピー性皮膚炎患者血漿に含まれる免疫グロブリンG(IgG)が対照と比べ有意にニトロ化修飾を受けることが明らかとなった。バイオマーカーとして利用するためには、アトピー性皮膚炎に対する特異性が重要である。そこで他の炎症性疾患患者血漿との比較を行った。アトピー性皮膚炎、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス患者の血漿に含まれるIgGトリプトファン残基のニトロ化修飾率を調べたところ、アトピー性皮膚炎と関節リウマチ、全身性エリテマトーデス患者の間に統計的に有意な差が見られた。一方、アトピー性皮膚炎患者と乾癬患者との間には統計的に有意な差は見られなかった。乾癬との差に関しては今後検体数を増やし、さらに詳細に検討を行う予定である。以上の結果は、ニトロ化修飾に着目することで、IgGがアトピー性皮膚炎のバイオマーカーとして利用できる可能性があることを示している。
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