緒言:睡眠時ブラキシズム(SB)は、睡眠関連運動異常症と定義され、顎口腔系に様々な障害をもたらす可能性がある。したがって、口腔の健康維持、歯科治療の予後改善のためにSBの管理は非常に重要である。本研究ではプラセボ二重盲検法を用いて一次性のSB患者を対象に、中枢神経作用を有する二種類の薬剤(クロナゼパム、クロニジン)およびプラセボを被験者に無作為に投与し、睡眠ポリグラフィ(PSG)を用いてSBの抑制効果を比較検討した。 方法:被験者は、20人の健康成人(男性:9人、女性:11人 年齢26.5±2.5才)を選択した。PSG測定は合計5夜実施した。1夜目は順応とし、2夜目はSBの確定診断およびベースラインの測定を行った。その後3、4、5夜目に就寝30分前に薬剤を服用させた。薬剤はクロナゼパム(1.0mg)、クロニジン(0.15mg)、およびプラセボの3種類を同一形態に調剤し、外観上識別ができないカプセルに封入した。3、4、5夜目の投薬服用順は、各被験者に対してランダムに割り付けた。 結果:SBに対する投薬の効果は、2夜目のベースラインのRMMA indexを基準とした比率で評価した。クロニジンの投与によるRMMA indexの変化率(0.44)は、クロナゼパム(0.80)、プラセボ(0.72)の投与時の約2分の1であり、クロニジンの抑制効果は他の2薬と比較して有意に大きかった。 考察:本研究により、SBに対するクロニジンの抑制効果は、クロナゼパムとプラセボに比べて有意に大きいことが明らかになった。クロナゼパムは、睡眠調節機構や運動調節機構の異常を改善することにより二次性のSBを抑制すると考えられるが、そういった背景のない一次性のSB患者には有効ではなく、その効果はプラセボ効果と同程度あった。
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