研究概要 |
身体抑制は、患者の人間としての尊厳を奪い、家族にも深い悲しみを与える非人道的な行為であり、2000年からの「身体拘束ゼロへの取り組み」を機に身体拘束・解除フローシートやチャートを活用し減少傾向にある(内山,2011)(栗畑,2010)。しかし、クリティカルケア領域では特にセイフティマネージメントの視点から「必要悪」として未だ行われているのが現状である。そして、一人ひとりの患者に対して状況下での判断と実践は、個々の看護師の臨床の「知」である。 卓越した看護実践は、状況を直観的に把握して正確な問題領域に的を絞り(ベナー,2005)、行動は自動化されており、言葉にすることのできない「暗黙知」が多い。本研究は、クリティカルケア領域において身体抑制を行う看護師の臨床の「知」を参与観察、インタビューにより明らかにすることを目的としている。 現在までに得られている結果は、患者の身体を縛るという行為を実施する、その時のみの判断や抑制の方法ではなく、予定手術の患者には術前からの術後の様子説明やICU訪問の試み、環境調整、生活リズムを整える、検査データに着目するなど、身体の抑制が必要とならないための関わりや自分の受け持ち時間内に抑制が解除できないかを査定するための試みとアセスメントを頻回に積極的に実施し「いち早く解除しょう」とするための看護実践が行われている。また、看護師は「私」という1人称ではなく、「私たちICUの看護師が、、」あるいは「私たちICUの看護は、、」とチーム全体の看護を考えていることも特徴である。 これらの結果からも、看護師の語りから「暗黙知」が明らかなりつつあり、今後のインタビユーに期待したい。本研究がクリティカルケア領域での身体抑制に対する看護の質の向上、患者および家族に対してよい看護を提供することの一助となると考える。
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