法医学では一般的にshort tandem repeat領域(STR)を用いて個人識別を行っているが、曝露された環境や保存状態の悪化からDNAの断片化が起こり、従来のSTR法では解析が困難となる場合もある。近年では一塩基多型(single nucleotide polymorphisms; SNPs)解析が、遺伝子増幅サイズが短い理由から法医学分野でも注目されている。そこで、DNA損傷を受けにくい領域に存在するSNPsに着目し、従来の手法では解析が困難な劣化したDNA試料からでも解析可能なSNPsマーカーを探索するために、フィンガープリント法の一種であるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)法によってSNPsのスクリーニングを行った。なお分析にはAFLP Analysis System I(Invitrogen)を使用した。試料はヒトゲノムDNA(K562 DNA High Molecular Weight; Promega)のコントロールDNAを使用し、200bp以下の短いDNA断片になるように熱処理した後、処理前後のDNA試料を用いてAFLP分析を行った。ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりバンドパターンを確認し、目的のAFLPバンドである劣化前後で共通に検出されるバンドを切り出した。切り出したバンドからDNAを抽出してPCR後ダイレクトシーケンス解析を行った。バンドパターンの再現性を得るために3回の繰り返し実験を試みた。最終的に32の変性前後で共通のAFLPバンドを確認し、そのうち複数のバンド由来のDNA断片において既存のSNPsが同定された。
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