研究課題/領域番号 |
25893262
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
村山 良介 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (70706811)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | OCT / 超音波 / 再石灰化 / エナメル質 / 近赤外線 |
研究概要 |
本研究の目的は,近赤外線領域に二つの測定波長(1310nm・830nm)を持つ試作光干渉断層画像診断装置を応用して,その光学的特性の差異から,エナメル質の脱灰,石灰化の状態を非破壊,非接触にて定量化し,その客観的資料から,エナメル質の白班病変等における脱灰の程度を検討することによって,介入の指標とし,非侵襲的手法による初期齲蝕の検出評価法を臨床的に確立し,治療方針を立案することである。 実験では,近赤外光の干渉原理を応用したOCT装置を用い,健全エナメル質と脱灰を行った部位の信号強度分布を比較した。白班部は,初期齲蝕に認められるホワイトスポット等結晶構造が周囲と異なるため,光の屈折率に差が生じ,その結果として現れるものである。本実験の結果,光干渉断層画像装置から得られた情報では,脱灰傾向にあるエナメル質は,OCTの信号強度は増幅傾向にあることがわかった。さらに,830nmの波長を用いたOCTは1310nmに比べ,表層直下の信号強度に差が生じることがわかった。さらに,アルゴリズムとして1/e2幅を用いた解析では,1310nmと830nmでは,差が生じることが分かった。その詳細は,1310nmの光源では,波形は深部に及ぶ信号強度分布を示し,830nmを用いた光源では,その値は表層に限局していた。これらの結果から,白班病変部はエナメル質表層数μmの領域に発現するため,その詳細を解析するには,分解能の高い波長である830nmの光源を応用することが妥当であることがわかった。さらに,1310nmの光源は,深部への透過性が高いため,深部の断層画像を得るには1310nmの光源を用いる方が有利である事がわかった。これらのことから,エナメル質の脱灰,再石灰化における状況を定量化することによって,光干渉断層画像法を初期齲蝕等の診断に用いる事が可能である事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,歯質の脱灰状況とOCT像の関連性を探るため,脱灰試片における波長1310nmおよび830nmによって得られたOCT像を観察するとともに,信号強度分布等,基礎的データを収集した。さらに初期齲蝕病巣モデルに対して再石灰化療法を行った場合の変化を,波長1310nmおよび830nm のOCTを用いて観察するとともに,信号強度分布の経時的変化等,基礎的データを収集した。これらから得られた基礎的画像データ,信号強度分布の結果を定量化し,脱灰および再石灰化傾向の指標とした。これまで実験は滞りなく進行し,超音波縦波音速の測定実験との相互補完的に考察が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
実験によって得られたOCT像から,信号強度分布およびピーク波形を解析,定量化を行い,脱灰および再石灰化における信号強度分布を,1310nmおよび830nmにおける経時的変化を比較,検討する。さらに,1/e2を応用することによって表層の信号と深部の信号を分離し,初期齲蝕の表層下脱灰の程度を,非破壊的に検討する。また,超音波パルス法により,歯質の縦波音速を測定し,非破壊的手法の比較・検討を行う。また走査型電子顕微鏡観察を行い,得られた断層像と比較・検討し相互補完的に考察する。以上を今後の実験課題とする。
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