本研究の概要は,非侵襲的手法による初期齲蝕の検出評価法を臨床的に確立し,治療方針を立案することを目的としている。方法としては近赤外光の干渉原理を応用したOCT装置を用い,得られたデータから歯質の脱灰状況を評価するものである。初期齲蝕等に認められる脱灰病変は周囲の健全エナメル質と結晶構造が異なるため光の屈折率の差として現れる。そのため,初期齲蝕の検出には,非破壊,非接触による定量化が可能なOCT装置を応用することが有効である。実験では,健全エナメル質と脱灰を行った部位の信号強度分布を数値データとして得た。その数値をアルゴリズムとして1/e2幅を用い,解析を行い,積分値を算出した。本年度の実験ではヒトエナメル質を試片として用いた。本実験の結果,光干渉断層画像装置から得られた情報では,脱灰傾向にあるヒトエナメル質は,OCTの信号強度は増幅傾向にあることがわかった。さらに,1/e2幅は増加することがわかった。830nmの波長を用いたOCTは1310nmに比べ,表層直下の信号強度に差が生じることがわかった。さらに,アルゴリズムとして1/e2幅を用いた解析では,1310nmと830nmでは,差が生じることが分かった。その詳細は,1310nmの光源では,波形は深部に及ぶ信号強度分布を示し,830nmを用いた光源では,その値は表層に限局していた。これらの結果から,白班病変部はエナメル質表層数μmの領域に発現するため,その詳細を解析するには,分解能の高い波長である830nmの光源を応用することが妥当であることがわかった。これらのことから,ヒトエナメル質の脱灰,再石灰化における状況を定量化することによって,光干渉断層画像法を初期齲蝕等の診断に用いる事が可能である事が示された。
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