研究概要 |
歯嚢は、神経堤由来の外胚葉系間葉からなる組織であり、未分化間葉系幹細胞が存在する。近年、培養細胞シートは生体に速やかに生着することで注目されており、幹細胞を用いた細胞培養シートの作成は新たな再生医療技術として注目されている。本年度は歯嚢由来細胞シートの作成および歯嚢由来細胞培養シートの新生骨形成能を検討した。【方法】本学倫理委員会の規定に基づき、埋伏歯抜歯の際に生じる歯嚢を採取し、酵素処理を行い歯嚢由来間葉系幹細胞細胞(hDFCs)を分離抽出した。hDFCsを骨芽細胞誘導培地で培養し石灰化能を検討した。また、増殖培地および骨芽細胞誘導培地で培養したhDFCsからtotal RNAを抽出した。次にhDFCsの細胞シートを作成するため、温度応答性培養ディッシュでhDFCsで培養し、細胞シートを作成および回収した。さらに作成された細胞シートを8週齢のf344雄性ラットに移植し、in vivoでのラット新生骨形成能について検討した。【結果および考察】分離したhDFCsはSTRO-1, Notch1などの間葉系幹細胞マーカー陽性所見であった。骨芽細胞誘導培地で培養した細胞は増殖培地と比較し、有意に骨芽細胞分化マーカーの発現が上昇するとともに、アリザリン染色陽性であった。作成された細胞シートは弾性に富み、3枚までのシートの重ね合わせに成功している。骨芽細胞誘導培地で培養した細胞シートを3枚に重層し、f344雄性ラットのオトガイ部に移植した。現在移植を10日目であり、今後はHE染色およびµCTにて新生骨形成能を検討する予定である。現時点では歯嚢には間葉系幹細胞が存在し、骨芽細胞誘導培地で培養すると石灰化することがわかっている。また細胞シートの作成および3枚の重ね合わせに成功している。また作成した細胞シートをラットへの移植も成功している。今後は細胞シートの細胞学的性質を検討する予定である。
|