1.細胞膜および細胞膜マイクロドメイン脂質解析のための方法確立 細胞膜のプロテオーム解析に用いられている、カチオニックコロイダルシリカビーズ(CS)法による細胞膜分離技術を細胞膜リピドミクスに応用するために、CS法を改変した。これによりマイクロドメイン脂質を構成する脂質群を分子レベルで解析することが可能となった。 2.刺激による細胞膜マイクロドメイン脂質の変化の解析 上述の方法を用いてマウス線維芽細胞について細胞膜脂質の解析を行った。はじめに、スフィンゴミエリン(SM)が細胞膜マイクロドメインの主要な構成脂質であることから、SM欠損株では、マイクロドメイン脂質にどのような影響があるか調べた。その結果、マイクロドメイン領域の大きさは変化せず、スフィンゴ糖脂質レベルが上昇してSMが減少した分を補っていることが判明した。次に、細胞に対して細胞死を誘導するセラミド(C2-Cer)刺激や成長因子群を含む血清刺激の際に、細胞膜マイクロドメイン脂質にどのような変化があるかを解析した。その結果、C2-Cer刺激後に細胞膜のセラミドが上昇するととともに、ジアシルグリセロール(DAG)とホスファチジン酸(PA)がともに上昇することが判明した。また血清刺激では、刺激後2分以内に細胞膜PAの一過性の上昇が見られた。一方DAGは分子種によってそのレスポンスに違いが見られた。 3.骨髄間質細胞(MC3T3-G2/PA6)の細胞膜脂質の解析 PA6が脂肪細胞に分化する過程において細胞膜脂質の組成変化を解析したところ,分化の進行に伴い細胞膜セラミドレベルが上がることが判明した。
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