平成26年度の研究によって、出産経験者の大半が妊婦健診における超音波検査を出生前診断の認識がなく受検していたことが推察された。超音波検査は、全妊婦を対象としたスクリーニング検査であるが、現在では胎児の形態異常や臓器異常を判別できるようになったため、広義の出生前診断とされる。超音波検査による胎児異常の判明後、人工妊娠中絶をする女性の増加の報告もあることから、超音波検査の受検に関して、妊婦が主体的な意思決定をできることが必要である。 そのため、妊婦の超音波検査に関する捉え方について明らかにすることを目的に半構成面接を行った。対象は、超音波検査を受検し、遺伝カウンセリングを受けておらず、胎児異常所見が判明していない妊娠15週前後の妊婦とし、個別面接を1回実施した。その語りを逐語録にし、データを内容分析の手法で分析した。 その結果、選定基準を満たす7名(平均年齢: 34 ± 7歳)に面談を行った。本研究の調査機関では、妊婦健診の初診時に超音波検査について医師が説明を行い、受検や胎児異常判明時の告知の有無について書面で意思を確認している。しかし、7名ともに初診時の超音波検査についての説明内容を覚えておらず、3名は胎児異常判明時の告知を希望したか否かさえ記憶していなかった。 よって、妊婦健診初診時の医師の説明は、妊娠判明の高揚感から多くの妊婦が十分に理解できないことが示唆された。超音波検査において胎児異常が判明する可能性についても十分に認識できておらず、その結果、超音波検査が出生前診断ではないとの認識につながると示唆された。以上のことから、妊婦健診における重要な説明や意思決定を伴う事柄については、複数回説明することの必要性が示唆された。超音波検査を含む出生前診断に関する説明についても、複数回に渡り説明を行い、妊婦の主体的な意思決定を支えることが必要であると考える。
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