研究課題
黄色ブドウ球菌の細胞表層の細胞壁タイコ酸はこの菌の主要な表層抗原となっており、このうちβアノマー結合したN-アセチルグルコサミンを修飾糖に持つリビトールリン酸鎖構造の重要性を見出してきた。このβ-GlcNAc WTAを基盤とするワクチン開発の構想のもと、β-GlcNAc WTAと免疫学的に同じ構造を有する乳酸菌の探索を行った。ヒト抗β-GlcNAc WTA抗体は黄色ブドウ球菌WTAに対する結合性をもとに注射用イムノグロブリン製剤から精製した。乳酸菌種はMRS培地で培養し、固定して用いた。ヒト抗β-GlcNAc WTA抗体の乳酸菌への結合性をフローサイトメーターを用いて評価する方法を確立した。これにより公的研究機関から試験提供を受けた132株の乳酸菌種のうちの1株が、抗β-GlcNAc WTA抗体に対する結合性を有することを見出した。焼酎粕から分離されたこの株は、16S rRNAのシークエンス解析によりLactobacillus属の一菌種と分かった。当該菌種においてデータベース登録されている複数株を対象に黄色ブドウ球菌のWTA合成遺伝子群のホモログを調査した。その結果WTAの連結領域やポリマー領域の合成酵素のホモログは見られず、この乳酸菌種は黄色ブドウ球菌とは異った構造のWTAを持つと考えられた。一方、糖転移酵素のホモログは見られることから、表層にはβ-GlcNAc付加を受けた糖鎖があり、それが抗β-GlcNAc抗体と結合していると推測される。別の乳酸菌種のLactobacillus plantarumはリビトールリン酸型のWTAを持つと報告され、ゲノム配列上も黄色ブドウ球菌WTAの合成遺伝子のホモログを有する。この菌の分離株を入手したが、抗β-GlcNAc抗体への結合性は無かった。本研究により、抗黄色ブドウ球菌抗体を誘導しうる、乳酸菌種の候補株が得られたものと考える。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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BMB Rep.
巻: 48 ページ: 36-41
化学と生物
巻: 53 ページ: 319-325
http://www1.niu.ac.jp/about/teacher/detail.html?data%5Bid%5D=267