今後の研究の推進方策 |
前年度に研究代表者らは、NFBD1/MDC1 (以下、NFBD1)の抑制はPLK1の発現上昇を誘導し、それよる未熟な分裂期開始がDNA損傷の蓄積を引き起こす可能性を報告した。(Ando et al. PLoS One 2013) これまでにPLK1はCHK1の機能を抑制することが知られており、NFBD1の機能抑制の分子機構とCHK1の機能抑制との関連が示唆される。そこで本年度は、NFBD1の機能抑制による抗がん剤感受性亢進効果の分子機構として、CHK1阻害剤処理によって誘導されることが近年判明したATM-PIDDosomeに依存したCASP2を介するアポトーシス経路 (Ando et al. Mol. Cell, 2012)を介するという仮説を立て、以下の2項目のアプローチで検証する。 1) NFBD1の発現抑制による抗がん剤感受性亢進効果とATM-PIDDosome 経路との関連を検討する目的に、HeLa 細胞由来のNFBD1ノックダウン細胞をレンチウイルスを用いたshRNA発現系を用いて作成する。この細胞にATM-PIDDosome経路の構成分子であるATM, PIDD, RAIDDまたはCASP2をsiRNAを導入し、抗がん剤剤感受性の亢進に及ぼす影響を検討する。同経路との関連性が示唆される結果が得られるならば、さらにATM-PIDDosome 経路の構成分子のノックアウトマウス由来の MEF を用いて、nfbd1siRNA が 抗がん剤感受性に及ぼす影響を検討する。また ATM, CHK1 または PLK1 の阻害剤を用いて抗がん剤感受性に及ぼす影響を検討する。 2) NFBD1の抑制による薬剤感受性亢進に必要不可欠な生物学的因子の同定する目的に、前年度までにCHK1 阻害剤に感受性の高いMYCN増幅神経芽腫細胞株を数種見出した。本年度は、これら細胞株を用いてCHK1阻害剤の処理前および処理後の遺伝子発現変化をcDNAマイクロアレイによって網羅的に解析し、CHK1阻害剤感受性に関わる候補分子を絞り込む。これら分子を標的としたsiRNAをNFBD1ノックダウン細胞に導入して抗がん剤感受性亢進に及ぼす影響を検討することで生物学的因子同定を目指す。
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