研究課題/領域番号 |
25893295
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
加藤 大志 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (80711712)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | ムンプスウイルス / 神経病原性 / 遺伝子操作系 / Pタンパク質 |
研究概要 |
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)はムンプスウイルスによって引き起こされる小児の代表的なウイルス性感染症である。ワクチンが唯一の効果的な対策法であるが、ワクチン接種後に発生する無菌性髄膜炎の問題で、現在日本では公的補助のない定期接種として行われている。本研究ではムンプスウイルスによる神経病原性発現機構を明らかにし、より安全なおたふくかぜワクチンの開発を進めるための基盤的研究を行った。 まずムンプスウイルス神経病原株の遺伝子操作系の確立を行った。ムンプスウイルス神経病原株であるOdate株の全ゲノムcDNAをクローニングし、ヘルパープラスミドと共に細胞に導入することで、感染性ウイルスを得ることができた。このウイルスの細胞内における増殖、および形成されるプラークの大きさは親株と同等であった。また、ラットを用いた病原性評価により、得られた組換えウイルスは親株にはやや劣るものの、評価を行うに十分な神経病原性を保持していることが示された。すなわち、神経病原性を有するムンプスウイルスの遺伝子を人為的に操作することが可能になった。この遺伝子操作系を用いることで、ムンプスウイルスの病原発現メカニズムの解明につながると期待される。 もう一つの成果として、ムンプスウイルスの病原因子の1つと考えられているPタンパク質の機能解析を行った。Pull-down Assayによりほ乳類細胞で発現させたPタンパク質を精製し、共沈降によって得られた宿主因子をペプチドシークエンスによって同定した。これらの因子の中にムンプスウイルスの病原性に関わる宿主因子が含まれていることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずムンプスウイルス神経病原株の遺伝子操作系の確立を行った。ムンプスウイルス神経病原株であるOdate株の全ゲノムcDNAをクローニングし、ヘルパープラスミドと共に細胞に導入することで、感染性ウイルスを得た。このウイルスの細胞内における増殖、および形成されるプラークの大きさは親株と同等であった。また、ラットを用いた病原性評価により、親株にはやや劣るものの、評価を行うに十分な神経病原性を保持していることが示された。Odate株の遺伝子操作系は今後ムンプスウイルスの神経病原性を評価するのに、有用なツールになると考えられた。 次に、ムンプスウイルスの病原性に関わると考えられているPタンパク質の機能解析を行った。Pull-down Assayによりほ乳類細胞で発現させたPタンパク質を精製し、共沈降によって得られた宿主因子をペプチドシークエンスによって同定した。現在、得られた宿主因子についてムンプスウイルスの増殖や病原性に及ぼす影響についてさらなる解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に確立したムンプスウイルスの遺伝子操作系を用いて、神経病原性に関わるウイルス側の因子を探索する。具体的には神経病原株であるOdate株と非神経病原株の各ウイルスタンパク質を入れ替えたキメラウイルスを作製し、病原性に関わるウイルスタンパク質さらにはそのアミノ酸を特定する。候補タンパク質の機能を基に培養細胞およびラットを用いて病原発現メカニズムを明らかにする。 平成25年度に得られたPタンパク質と相互作用する宿主因子については、siRNA等を用いて特にウイルス増殖に重要な役割を持つものを絞り込み、その詳細な分子メカニズムを明らかにする。
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