【研究目的】 近年、犯行現場に残された筆跡から、その筆者を推定する筆跡鑑定の重要性が高まってきている。犯行現場の筆跡には偽筆が含まれていることが多く、残された筆跡から、いかに偽筆に強い個人特有の特徴を抽出できるかがポイントとなる。 紙面に記載された筆跡は、強く記載されるほど筆記具のインクが濃くなり、それと同時に、紙面への凹みも強くる傾向がある。したがって、紙面における筆記具のインク付着状態に加え、その凹み状態からも筆圧情報を抽出して特徴として用いることができれば、一層の照合性能の改善が期待できる。そこで本研究では、紙面に記載された筆跡から、筆圧情報を抽出して特徴として用いることにより、これまでより偽筆耐性の高い検査方法の構築を目的とした。 【研究方法】 本提案手法では、日常生活でボールペンがよく用いられ、そのインクの多くが赤外線を透過するという特性に着目し、可視画像と赤外画像を同時取得可能なマルチバンドイメージスキャナを用いた。具体的には、可視画像(インクの濃淡画像)と赤外画像(インクの赤外線透過特性とスキャナの斜光照明により得られる、筆圧に応じた画線の紙面への凹みの陰影画像)を一括で取得し、それらの濃淡分布から筆圧情報を抽出して組み合わせて利用する手法を構築した。 【研究成果】 研究の結果、実際に筆跡サンプルを用いて本提案手法の有効性を評価したところ、従来の字形情報を用いた手法よりも、可視画像・赤外画像の筆圧情報を併用する本提案手法を用いることで、一層の照合性能の改善を得た。
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