【目的と方法】今回、ペントバルビタールナトリウムと鎮痛薬を混合することにより、安全で高い鎮痛効果を得ることができないか検討を行った。また、術後行動や創傷の治癒を観察することにより、術後鎮痛薬の動物に及ぼす影響の検討も行った。実験用動物はICR系マウス(オス)8-16週齢を用いた。1. 注射麻酔薬検討試験はA群 : ペントバルビタールナトリウム(以下Pen) 30mg/kg+塩酸メデトミジン(以下Med) 50μg/kg、B群 : Pen40mg/kg+Med50μg/kg、C群 : Pen30mg/kg+ブトルファノール(以下But) 2mg/kg、D群 : Pen40mg/kg+But2mg/kg、E群 : Pen45mg/kgとした。麻酔薬を尾静脈より投与し、麻酔の深度や覚醒までの時間を測定し比較検討した。2. 術後鎮痛効果検討試験は1群 : メロキシカム5mg/kg、2群 : カルプロフェン5mg/kg、3群 : 鎮痛薬無しとした。イソフルラン吸入による麻酔下で右精巣の摘出術を行い、術後速やかに鎮痛薬を皮下投与し、鎮痛薬投与直後より行動解析装置を用いて、行動量や立ち上がり回数を測定した。また、術後から治癒するまで術野を観察し、創傷の治癒の様子を比較検討した。 【結果と考察】混合麻酔薬の麻酔効果については、今回用いた用量のPenとButの混合薬では十分な麻酔時間を得られることができず、今後、用量の検討が必要である。PenとMedの混合では十分な麻酔効果を得ることができ、混合麻酔薬として用いることができるものと考えられた。しかし、Penの用量により、覚醒まで時間や心拍数に影響を及ぼしていることが推察されたため、今後、混合割合を変更してさらに検討したい。また、鎮痛薬の術後投与による創傷治癒にかかる期間の延長や自傷行為などは無く、術後の痛みが軽減されていることが推察されることから、術後鎮痛薬が動物や実験に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。しかし、用いる鎮痛薬の種類または用量によっては鎮痛効果が得られないことがあるため、適切な種類や用量についてさらに検討を続けるとともに、さらに、今後、腹腔内投与を行った場合でも、尾静脈投与と同様な結果が得られるかについても検討を行い、今後、術後鎮痛薬の使用を広めるとともに、実験動物福祉に寄与したい。
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