研究概要 |
本研究では、盲導犬として使用されているラブラドール・レトリーバーの遺伝性疾患の頻度調査を行ったものである。前年度の奨励研究(No. 24925027)の継続調査である。本年度は、盲導犬としてラブラドール・レトリーバーにおけるピルビン酸キナーゼ欠損症、X連鎖性筋細管ミオパチー、眼骨格成不全症の遺伝子頻度の調査を行い、加えて運動誘発性虚脱に関して盲導犬と家庭犬の集団における差異を調査した。 ・ピルビン酸キナーゼ欠損症 : 常染色体劣性形質の遺伝病で、ラブラドール・レトリーバーにおける原因変異が報告されている。盲導犬100例の調査において、全てが野生型の遺伝子型と判定された。 ・X連鎖性筋細管ミオパチー : X連鎖劣性形質の遺伝病である。盲導犬100例の調査したが、全ての個体で野生型の判定された。 ピルビン酸キナーゼ欠損症とX連鎖性筋細管は、盲導犬集団内に原因変異が導入されていないと考えられる。これらの疾患が家庭犬集団における頻度調査を行う必要がある。 ・眼骨格形成不全症 : 常染色体劣性形質の遺伝病である。原因変異がIX型コラーゲンα3鎖遺伝子のエクソン1への挿入変異である。ターゲットとなる遺伝子座のGC含量が非常に高く(82%)、一般的なPCRでは増幅することが困難であった。GCリッチ用の戦略を立てなおして、調査する必要があるだろう。 ・運動誘発性虚脱 : 常染色体劣性形質の遺伝病で、前年度の調査で、盲導犬集団の発症頻度が7.45%、キャリア頻度が33.3%であることを報告した。今年度の研究では家庭犬集団の調査を行ったところ、発症頻度が6.2%、キャリア頻度が31.8%であることを明らかにした。盲導犬(推定2,000頭)と家庭犬(推定100,000頭)の集団の規模が著しく異なるにも関わらず、頻度に大きな違いが認められなかった。運動誘発性虚脱の遺伝子は日本国内で平衡状態に達していると考えられる。
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