研究課題/領域番号 |
26000001
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
馬奈木 俊介 九州大学, 工学研究院, 教授 (70372456)
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研究分担者 |
山口 臨太郎 九州大学, 都市研究センター, 学術研究員 (30557179)
佐藤 真行 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10437254)
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研究期間 (年度) |
2014 – 2018
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キーワード | 持続可能性指標 / 包括的富 / シャドウ価格 / 便益移転 / データベース |
研究実績の概要 |
本年度も、関連学術査読付論文を国際・国内学術雑誌に多数掲載し、また書籍も学術的に知名度の高い国際・国内の出版社から出版(確定)している。発表した学術論文はすべて査読付論文であり、分野も、特別推進研究で研究対象としている環境経済・環境政策・環境行動・資源・エネルギー・災害・生物多様性・持続可能性など多岐にわたる。代表・分担者及び特任講師・助教・学術研究員は、定評のある国内・国際主要学会にて発表を行っている。 まず、本研究が対象とする震災を考慮した今後の持続可能な発展論の経済学的研究のため、人工資本・人的資本・自然資本を統合し算出した、持続可能な発展の指標である新国富指標(包括的富、IWI)について、日本国内の地域レベルでの算出を終え今後もデータの更新が可能な体制を整えた。構築された国内データを使用して宮城県と福島県を対象にIWIの変化を測定し、震災等の外的ショックが持続可能性にもたらした影響を議論し、都道府県、政令指定都市、市区町村レベルでの新国富指標の計算に取り組み、分析結果は査読付き論文・日本語書籍として発表するだけでなく、国内政策に示唆を与えた。政策ツールとして、IWIやグリーンNNPの額・成長率にリンクする債券を思考実験として提案し、各国の制度がIWIに与える影響を分析した。更に将来人口を含めた一人当たりで見た動学的平均功利主義IWIと通常の一人当たりIWIを理論・実証的に比較分析し、持続可能性分析に与える影響を考察し、環境意識・行動・資源を考慮した総合的幸福度・生活満足度の主観的福祉指標を構築するため、平成27年度から実施している国際調査をインターネット及び面接調査により継続実施し、教育や年収等も含めて多国・地域で比較分析が可能なデータ構築を行っている。この調査から得られたデータに基づき、所得格差、環境意識と行動、エネルギーインフラや交通網に関する状況と主観的福祉の関係分析を進めた。IWIの構成要素である自然資本のシャドウ価格について、生態系サービス評価を通じた推定を行った。特に、SEEA-EEA体系との整合性を検証しつつ, 生態系勘定の枠組みを整備することでその他資本データとの接続を可能としただけでなく、主観的福祉に与える影響の観点からも推定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
持続可能性の一つの指標である新国富(包括的富、IWI)について、国内自治体を対象にした分析を一通り終え、データ更新の体制を整え、結果を論文・書籍で発表した。外的ショックが持続可能性に与える影響についても、過去の震災を対象とする分析を終えた。人口減少については、将来人口を含めた一人当たりIWIに基づく動学的平均功利主義での分析枠組みを構築した。また、制度がIWIに与える影響についても分析を行った。 主観的福祉指標を構築するための国際調査については、アジア諸国、中南米諸国、ロシア、南アフリカ、エジプト、オーストラリア等に加え、北米(アメリカ・カナダ)、欧州(イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、イタリア、スペイン、ギリシャ、ハンガリー、トルコ、ポーランド、チェコ、ルーマニア)、新興国(トルコ、スリランカ)でインターネット調査(スリランカのみ現地調査)を順調に実施した。ただしイランと韓国については、政治情勢を考慮し調査を延期した。各国の人口に合わせ、サンプル数は500~20,000としている。また、整備されたデータを使った分析は順次開始しており、学術論文として公表しつつある。 自然資本のシャドウ価格については、森林・湿地など重要な自然資本から優先的に取り組んでおり、IWI指標の精緻化につながっている。
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今後の研究の推進方策 |
持続可能性の一つの指標である新国富(包括的富、IWI)について、国内データが一通りそろったことから、これらを用いた分析を続ける。外的ショックが持続可能性に与える影響については、福島県を対象に分析を続け、除染・中間貯蔵の影響を考察する。人口減少については、将来人口を含めた一人当たりIWIに基づく動学的平均功利主義の分析枠組みに基づき、数か国・国内の持続可能性分析を行う。また、制度の質がIWIに与える影響について、貿易や自然資本等を対象に分析を継続する。 またIWIについて、SNA(国民経済計算体系)やSEEA-EEAなど, 既存の指標体系との整合性の検証を理論・実証分析により行う。 主観的福祉指標を構築するための国際調査については、これまで実施した国々に加え、政治情勢により実施を延期したイランと韓国でも実施するだけでなく、平成27・28年度の対象国においても追加調査を行い、データを整備・充実させる。整備されたデータを使った分析も、主観的福祉と、格差、環境意識と行動、エネルギーインフラや交通網に関する状況との関係分析を中心に拡充する。 自然資本のシャドウ価格については、森林・湿地など重要な自然資本について、アメニティ価値を含めた理論的分析や推計をさらに進め、IWI指標の一層の精緻化を行う。
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