研究課題/領域番号 |
26000003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中畑 雅行 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70192672)
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研究分担者 |
小汐 由介 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80292960)
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研究期間 (年度) |
2014-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 超新星爆発 |
研究実績の概要 |
本研究ではスーパーカミオカンデの50000トンタンクにガドリニウム(Gd)を溶解し中性子を捉える機能を付加させ、反電子ニュートリノを使った超新星ニュートリノ観測を目指す。最も主要な観測対象は、宇宙の始まりから起きてきた超新星爆発からのニュートリノ(「超新星背景ニュートリノ」)である。超新星背景ニュートリノは未だに観測されたことがなく、本研究で世界初の観測を目指す。また、我々の銀河内で超新星爆発が起きた場合には、多数の反電子ニュートリノ反応事象とその5%程度の電子散乱事象が期待できる。本研究によって、反電子ニュートリノ事象を同定することができれば、方向性を持った電子散乱を使って超新星の方向決定精度を向上することができる。研究の初年度にあたる平成26年度は、(1)Gdを保持したまま水を純化するGd水循環装置の詳細設計、(2)スーパーカミオカンデタンクを水密化するための止水材料の試験、(3)硫酸ガドリニウム粉末を水に溶かすための溶解装置の設計を進めてきた。(1)においては装置の構成図、レイアウト図を作成した。(2)においては高水圧下でも止水能力を有すること、伸縮性を有すること、水の透過率を悪くしないこと、ラドンを放出しないことという条件を満たす材料の調査・試験をおこなった。(3)については導入方法を検討し導入機器の調査をおこない、設計を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Gdを保持したまま水を純化するGd水循環装置の詳細設計はほぼ予定通り進んでおり、我々が作成した概念設計を基にして複数の業者に詳細設計図、機器のレイアウト図を作成してもらった。しかし、スーパーカミオカンデの水漏れを止めるための止水材料は当初Marine Sealant GX(信越化学製)を使う予定であったが、ラドンの放出量が多く、他の材料を探さなくてはならなくなった。現在の候補はマインガードとよばれるポリウレタンあるいはポリウレア材料であるが、その試験がまだ進行中である。Gdの溶解装置の設計においては概念的な設計をおこない、必要とする機材の調査まではおこなったが、詳細設計は現在まだ進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はいち早くスーパーカミオカンデの止水材料、止水方法を決定する必要がある。止水方法は手塗りによる方法と吹付による方法があるが、条件を満たす止水材料の性質によりその方法が決まる。Gd水循環装置、Gd溶解装置のレイアウト図を基にして、設置場所の準備を東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設がおこなう。平成27年度以降は設置場所の奥から順番に配置していく。当初の予定ではGd水循環装置を先に導入し後にGd溶解装置を導入する予定であったが、設置場所とSKタンクとの相対位置関係により、その順番を逆にする可能性がある。スーパーカミオカンデタンクの止水工事には約6か月間の装置のシャットダウンを必要とするが、他の研究(T2K実験等)と調整しながら進めていく。
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