超新星背景ニュートリノの観測に向けて、スーパーカミオカンデ(SK)のタンク水にガドリニウム(Gd)を溶解し、逆ベータ反応の際に生成する中性子をGdの捕獲ガンマ線によって同時計測するのが本研究の目的である。超新星背景ニュートリノは宇宙初期から起きてきた超新星爆発からのニュートリノであり、それを捉えることによって宇宙の物質生成の歴史、平均的な超新星ニュートリノのエネルギー分布を探ることができる。本年度は、SKタンクを開けて水漏れを止めるための改修工事をおこなった。Gdは法的な環境基準値が与えられている物質ではないが、SKで研究を行うことを近隣住民の方々に理解してもらうには環境中に漏れることがないようにしてから実験を開始する必要がある。SKタンクはSK実験開始当初から一日当たり約1トンの水漏れがあった。本年度おこなった改修工事では、タンクの壁面を構成しているステンレス板の溶接接合部全線に渡って止水材料を塗布した。工事は平成30年6月から10月にかけて行われ、10月中旬から平成31年1月にかけて超純水の給水が行われた。平成31年2月初めに満水の状態で水漏れ試験を行った結果、有意な水漏れは確認されず、上限値として1日あたり0.017トン以下という結果を得た。これは以前の水漏れ量の200分の1以下であり、環境に与える影響を無視できるレベル以下まで下げることができた。また、本年度は純度の高い硫酸ガドリニウムの開発を継続し、次年度にGdを溶解するための準備を行った。本年度にタンクに超純水を給水する際にはGd溶解後に使用する予定だった水循環装置を使い、タンク水を汲み上げて超純水を循環させた。これにより今回はタンクが満水になった直後でもすぐにSKのニュートリノ観測を再開できた。また、これはGd水循環装置の試運転にもなった。
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