研究課題/領域番号 |
26000004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 俊則 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (90220011)
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研究分担者 |
大谷 航 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (30311335)
三原 智 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (80292837)
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研究期間 (年度) |
2014-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / スイス : イタリア : 米国 : ロシア / ミュー粒子 / 超対称性 / 大統一理論 / PSI / 液体キセノン / 加速器 |
研究実績の概要 |
MEG実験は、取得した全データを用いたμ→eγ崩壊探索解析が進められた。平成24-25年に取得した新しいデータを加えることにより探索データ量が二倍に増えることに加え、主要なバックグラウンドの一つである陽電子飛行中消滅(AIF)起源のガンマ線を同定する新しい解析を導入するなど解析手法の改善がなされ、最終的には5×10^<-13>の崩壊分岐比感度に到達する見込みである。新しいデータに関して実験中のミュー粒子停止ターゲットの位置に不定性があったことが判明したが、追加測量や新しい解析手法を導入することで影響を最小限に抑えることができた。 現MEG実験を一桁上回る究極探索感度(~4×10^<-14>)のアップグレード実験MEG IIは、改良型の新測定器の開発が順調に進められた。液体キセノン検出器については、浜松ホトニクスとの共同開発により要求性能を満たす新型半導体光センサー(VUV-MPPC)が完成した。プロトタイプ検出器用に600個の素子を製作、大量室温試験を行って素子の健全性を確認した後、プロトタイプ検出器に組み込み液体キセノン中での大量動作試験を行った。同時に実機用のセンサー4200個の量産も開始した。陽電子タイミングカウンターについては、実機条件に近いプロトタイプカウンターを製作して、イタリア・フラスカティ研究所でビーム試験を行った後、さらにPSIにおいて、MEG II実験で予想される高計数環境下でのビーム試験を行い、目標とする時間分解能が達成可能であることを示した。またミュー粒子崩壊からの陽電子やレーザーを用いた時間較正方法の検討が進められた。ステレオワイヤーを採用した単一ボリュームの新型陽電子飛跡検出器については、イタリアグループが中心となって各種試験と実機建設に向けての準備が順調に行われた。また、日本グループが提案した輻射崩壊陽電子検出器を正式に実験に採用してさらに探索感度を高めることとし、建設に向け詳細設計の最適化、センサーの選定試験などが行われた。これらによりMEG II用新測定器の研究開発はほぼ終了し、建設に向けての準備が整ったことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MEG実験で取得した全データの解析は、新しい解析手法の導入やターゲット位置の不定性問題などにより予定より遅れたが、目標とする探索感度を達成して平成27年度には最終結果を発表できる見込みとなっている。 一方MEG II実験については、技術革新により性能が向上した光センサーを採用するため研究の一部を翌年度に繰越すことになったが、平成27~28年度に新測定器を完成させてエンジニアリング運転を実施、その後物理データ収集に移行するという予定に大きな変更はなく、全体計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
MEG実験全データを用いたμ→eγ崩壊探索解析は、解析手法の改善および新データにおけるミュー粒子停止ターゲット位置の不定性問題への対処のために予定より遅れてはいるものの、解析は最終段階にあり平成27年度中には全データの解析結果を公表できる見込みである。MEG II実験については、平成26年度に新測定器の開発がほぼ終了しており、平成27年度は各測定器の建設、立ち上げ作業を行い、平成27年後半より測定器コミッショニングを開始する。平成28年度にはエンジニアリングランを開始、その後本格的な物理データ収集に移行する予定である。加速器の稼働スケジュールや同じビームエリアを使用する他の実験グループの動向に依存するが、3年間のデータ取得で目標感度に到達できる見込みである。
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