研究課題/領域番号 |
26000005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶田 隆章 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40185773)
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研究分担者 |
川村 静児 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40301725)
黒田 和明 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (00242165)
大橋 正健 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (80213833)
鈴木 敏一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 教授 (20162977)
フラミニオ ラファエレ 国立天文台, 重力波プロジェクト推進室・特任教授, 教授 (10723108)
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研究期間 (年度) |
2014-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 重力波 / 中性子星連星 / レーザー干渉計 / ブラックホール / 一般相対論 |
研究実績の概要 |
大型低温重力波望遠鏡KAGRAの低温ミラー懸架系は約200kgの質量を持ち、内側輻射シールドは約500kgの質量をもっている。観測を行うためにはこれら全体を20Kに冷却する必要があり、装置の修正をしては観測を繰り返すと予想される初期の段階では冷却速度の改善は極めて重要である。我々は既にダイアモンド・ライク・カーボン(DLC)のコーティングが表面の放射率を0.6程度まで向上させ、超高真空中で使用可能な黒化処理であるとの結果を得、初期冷却に要する時間を短縮できるとの試験結果を得た。この結果は博士課程の大学院学生の博士論文としてまとめられた。これによりKAGRA本体で迅速な運転立ち上げと稼働率向上につなげることができるとの結論を得た。また、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)より更に放射率の高いコーティング材料も探している。 懸架系高性能化に関してはまず構成要素に関する試験(サファイア・ファイバ強度、熱伝導率、機械的Q値の測定)、低温における制御モデル構築とシミュレーションを行った。これらをもとに懸架装置実証機を作成している段階に進んでおり、今後は既存のクライオスタット等を用いて、懸架系の冷却試験、機械特性試験と制御試験を行う予定である。 また、高度なディジタル制御系を集中的に構築中であるとともに、光学系としては、出力モードクリーナーの制御実験が開始され、マイケルソン干渉計の高周波雑音を低減することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温懸架に関して、低温鏡を吊り下げるサファイア・ファイバの固定法が問題となったが、国際的な共同研究が進展した結果、サファイア・ファイバの両端を太くした形状にし、その太いところを、HCB(Hydro Catalysis Bonding)法によりサファイアミラーに接着されたサファイア片にインジウム・ボンディングで接合する方法が適していることが判明した。この方法を確立すれば問題は基本的に解決できる。その他の研究項目についても大きな問題点は見つかっておらず、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
重力波望遠鏡KAGRAの共同研究者は既に国内外合わせて200人を超えているが、今後もKAGRAの研究に参加する研究者を増やしていくことが大切である。これについては、例えば、神岡に近い富山大学の研究者に分担者として本研究に参加してもらうなどの努力を続ける予定である。それによって幅広い研究組織を構築することができ、新たな感度向上方法の発案などが期待できる。 本研究では最先端研究基盤事業及び概算要求による施設整備費により整備された装置を出発点とし、その迅速な運転開始及び標準量子限界をも超える高度化のための先進的技術を開発することを目指している。それらの技術を備え付けた最先端装置のコミッショニングとその安定動作を迅速に行い、できるだけ早い時期に重力波の観測を開始することが目標である。 この目標を本研究期間内に確実に達成するため、以下のようなマイル・ストーンを設定している。まず、常温の鏡を用いたシンプルな干渉計を動作させ、3kmという我々にとって未経験の大型干渉計動作に関する経験を得る。これを平成27年度中を目処に達成する。この経験をもとに改良を加え、その後、この干渉計に、光のリサイクリングシステム、干渉信号中のノイズ除去を加え、更には鏡も極低温で動作させ、標準量子限界を超える最終目標感度で重力波の観測を目指してゆく。これらの技術を盛り込んだ干渉計の動作を平成29年度途中に達成する予定である。
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