研究課題
本研究では重力波の観測と重力波天文学の創成を目指し、大型低温重力波望遠鏡KAGRAの研究基盤をベースに、熱雑音を最小化する低温懸架システムの開発、極低温鏡急速冷却方法の開発、グリーンレーザーを用いた干渉計の迅速かつ安定な動作状態獲得、新たな信号読み出し法を可能にし、干渉光に含まれる余計なノイズを削減する出力モードクリーナーの開発などを行った。また、レーザー強度雑音の低減、さらに最終的には自動で観測モードまで進む高度なデジタル制御システムの開発を行った。これらの本研究で開発した多くの新アイデアや装置を導入し2019年にKAGRAを完成させ、2020年2月には重力波観測を開始した。2018年に初めて低温鏡をもちいた干渉計を運転したときと比べ、2020年3月時点で300Hzでは約5桁感度が改善している。また昨年12月から今年2月の間の感度向上の主な理由の一つは出力モードクリーナー動作による。感度においては数百Hz以上でほぼ目標を達成した。しかし、それ以下の低周波帯ではまだ理解されていないノイズが残り、極低温鏡の特性を生かして100Hz付近で標準量子限界を超える感度を達成するのは今後の課題である。国際協力という観点からは、2019年10月4日にはLIGO, Virgo, KAGRAの国際観測ネットワーク構築に関する協定に調印し、今後は国際共同体制で観測を進めることになった。このことは、本研究の成果をベースにアジア・オセアニア地域の観測拠点が稼働し始めたことを意味する。国際観測ネットワークにKAGRAが参加すれば、重力波源の方向特定精度が格段に良くなるなど多くのメリットがあり、マルチメッセンジャー天文学に大きな貢献ができることになる。今後は、感度を向上させつつ観測を実行し、重力波天文学を進展させていく。それと共に重力波の観測データを通して天体物理学・宇宙論・原子核物理など基礎物理学の発展にも貢献し、さらには量子光学技術等への発展へも寄与することを目指していく。なお、2019年9月にTAUP(宇宙粒子と地下での物理に関する国際会議)を富山市で開催し、本研究の成果を広く国際コミュニティに報告した。また、2020年4月現在、観測運転で取得されたデータの重力波探索解析が進められている。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (85件) (うち国際学会 43件、 招待講演 18件) 図書 (1件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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