研究課題
(研究の目的)メガバールを超える圧力領域の物質科学を新展開させることを目的とすることで、これまで為し得なかった物質創造に挑戦する。特にシンプルなシステムや機能性物質は超高圧力による顕著な効果が期待できるので、以下の3項目 : 項目A「水素をはじめとしたシンプルなシステムの超高圧物性」、項目B「超高圧合成による機能性物質のフロンティア」、項目C「革新的な高圧力実験技術および理論計算手法の開拓」を重点的に焦点をあてて、必要な技術開発をあわせて行った。(最終年度の成果)高温超伝導が理論予測されている水素化物(イットリウム、ランタン、ストロンチウムの水素化物)を純水素、またはアンモニアボランなどの水素発生源とともに加圧し、レーザーにより加熱を行い合成を試みた。電気抵抗の変化やX線回折像を同時に測定し、その後に冷却し電気抵抗の温度変化を測定した。ランタン水素化物の合成に成功し、70ケルビンの超伝導の観測した。(期間全体の成果)以下に項目別に成果を抜粋して列挙する。<項目A>「水素化物の超伝導」200ケルビンの高温超伝導を示す硫化水素の結晶構造を実験的に決定し、単体水素と硫黄から直接的に高温超伝導体を合成することに成功した。また白金の水素化物の合成と超伝導化に成功した。<項目B>「熱電材料の超伝導」熱電材料であるマンガンーシリコンの2元系合金において、高圧下で超伝導を示唆する電気抵抗の減少を観測した。<項目C>「4メガバールを超える超高圧技術開発」トロイダル型または2段式のダイヤモンドアンビルを設計・作成して圧力発生限界値を探索し、さらに物性測定を可能とする電極プローブの挿入にも成功し、低温かつメガバール下の超伝導測定を行った。「第一原理電子状態計算を用コンピュータ・シミュレーション開発」結晶構造探索手法を新たに考案し、ポテンシャルエネルギー面トレッキングと名付けた。これを第一原理電子状態計算手法と組み合わせて、これまでよりも精度の高い電子状態計算が行えるようになった。以上の通り、メガバールの高圧力による超伝導体の発見、機能性材料の創出や合成法の確立が、これまでの元素置換やドーピングなどといった操作の限界を打破できることを示した。高圧力下の超伝導をはじめ先駆的な成果は今後の物質機能開発の新たな基盤をなすと期待できる。(今後の展開計画)上記の通り、設定した研究3項目において計画に近い成果を得たが、究極の挑戦項目であった固体水素の金属化には毛結果的には技術が未確立であり到達しなかった。しかし水素化物と単体水素のための超高圧の発生および安定な水素封止と水素供給源の利用は、本研究により大幅に進展したといえる。現在、極めて注目されている水素化物の高温超伝導体の合成において、その結晶構造の実験的同定および高温超伝導候補物質の提案は、理論的手法による探索の精度向上とあわせて緊急に実施すべき課題である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (63件) (うち国際学会 13件、 招待講演 9件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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