研究課題
本研究では、我々の開発するトリヌクレオチドリピート結合分子を用いて、リピート伸長とリピートRNAの機能を低分子で調節する化学を拓き、トリヌクレオチドリピート病の新しい治療法開発に資する創薬リード化合物の創製を目指して、以下4つの研究項目、1)リピート結合分子の性能向上と創製、2)結合分子のリピート不安定化誘導と分子機構の解明・短縮分子探索、3)結合分子によるToxic RNAの捕捉、4)RAN Translationの分子機構解明と低分子による調節原理導出、を実施する。平成30年度は、研究項目1)に関して、前年度までの成果をもとにCUGリピート結合分子の構造最適化を進めた。計算機シミュレーションにより選択したジアミノイソキノリン誘導体の構造活性相関研究を進め、5位に導入した置換基および認識部位の二量化が、CUGリピートへの選択的結合やRNA foci生成解消に重要であることを見出した。また、リピート結合分子の性能向上を目指し、リピートDNAを認識・結合した後に標的配列上で二量体化して強固な結合能を発揮する分子を新規に開発した。研究項目2)では、プライマー伸長反応において観測された結合分子依存的なリピート短縮化産物について次世代シーケンサーを用いた定量解析を実施した。また、本成果をもとに結合分子のリピート短縮効果に基づくハイスループットスクリーニング系の確立を進めている。研究項目3)に関しては、脊髄小脳失調症31型(SCA31)に関わる5塩基リピートRNA (UGGAA)に結合する分子として前年度同定したNCDによるtoxic RNAの捕捉を細胞レベルで評価した。研究項目4)については、ポーランドアダムミツケビッチ大学との共同研究により推進中である。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、昨年度までに開発したリピート結合分子について、モデル細胞、個体モデルを用いたバイオアッセイを推進し、有望な成果を得ている。具体的には、脊髄小脳変性症31型(SCA31)の原因となるUGGAAリピートに結合する分子NCDを用いた細胞レベルのアッセイにより、NCDの添加によりRNA凝集体が減少することを明らかにした。既にショウジョウバエモデルをもちいたフェノタイプアッセイにおいて、NCD添加による複眼異常回復を観測しており、NCDの作用機序の解明が期待される。また、CUGリピートに結合する分子であるアミノフェナンスロリン誘導体およびジアミノイソキノリン誘導体が、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)の細胞モデルならびにマウスモデルにおいて、スプライシング異常修復効果を示すことを確認している。ジアミノイソキノリン誘導体は顕著な置換基構造依存性を示すことを見出しており、構造最適化を行うことで異常回復活性の更なる向上が期待できる。ハンチントン病に関係するCAGリピート結合分子NAについては、ハンチントンマウスモデルの線条体において観測されたリピート短縮効果について、阪大医学部、カナダSick Kids Instituteとの共同研究成果を踏まえて、Nature Geneticsに再投稿している。
繰越申請の研究計画に従う。具体的には、筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)に関わるCUGリピートに結合するジアミノイソキノリン誘導体について、構造最適化実施後の誘導体を用いて、疾患モデル細胞、モデルマウスにおける効果を明らかにする。また、NMR複合体構造解析により、ジアミノイソキノリン誘導体の分子認識機構の解明を進め、さらなる構造最適化と分子認識の新原理創出を目指す。本研究課題推進を通じて構築した共同研究ネットワークを最大限に活用し、研究課題のとりまとめを行う。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 24件、 招待講演 17件) 備考 (1件)
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