研究課題/領域番号 |
26000011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河田 聡 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30144439)
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研究分担者 |
田端 和仁 東京大学, 工学研究科, 講師 (50403001)
藤田 克昌 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80362664)
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研究期間 (年度) |
2014 – 2018
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キーワード | 細胞内分子イメージング / ラマン分光 / 表面増強ラマン散乱 / 超解像イメージング / 細胞内センシング / 機能性分子 / スペクトル解析 / 金属ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、細胞内分子イメージングのための「3次元・ナノ・分析・光学」顕微鏡を開発することを目的としており、昨年度には下記の4つの研究実績を達成した。 1) 細胞内環境イメージング技術の開発 昨年度までに開発していた機能性金属ナノ粒子プローブを用いて、細胞内ナノ分析顕微鏡による測定を行い、細胞内環境イメージング技術の開発を進めた。機能性金属ナノ粒子プローブが細胞内環境においても、設計どおり機能するかを、従来の光学測定法での結果と比較しながら確認した。その結果を踏まえて、機能性金属ナノ粒子プローブ、及び、細胞内ナノ分析顕微鏡の最適化に取り組んだ。 2) 細胞内タンパク分析プローブの開発 本年は、タンパク質ベースの細胞内ATP濃度を検出するラマンプローブに関連する研究として、そのタンパク質をサブユニットとして持つF1-ATPaseに関する報告を行っている。様々な種からのF1-ATPaseに関してその性質の報告を行っている。これらは、ATPセンサーを作る上で、異なるATP濃度に反応するプローブ開発やADPやその他ヌクレオチドを検出するためのプローブ開発につながる。また、微小空間を用いた少数の酵素分子の働きをラマンで検出するためのデバイス開発にも取り組んだ。 3) スペクトル分析・画像構築技術の開発 細胞内環境イメージング技術の開発で必要となる、即時スペクトル解析技術の構築作業を進めた。前年度までに開発したスペクトル解析技術と顕微鏡制御ソフトウェアとの連携をさらに進めて、測定と後即座にスペクトル解析が可能な統合ソフトウェアを構築した。 4) 非線形分光特性の測定 機能化した機能属ナノ粒子の分光検出において、非線形ラマン分光やプラズモン励起を利用した場合の検出特性を実験的に把握した。具体的には、非線形効果を誘起できる条件で光照射を行い、得られる分光スペクトルと通常のスペクトルとの比較を行い、計測における優位性が得られる測定条件を模索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、研究の進展に大きな問題はない。細胞内における局所ATP濃度をラマンによって検出するタンパク質ベースのセンサー開発を行った。金コロイド上にこれらタンパク質を機能的な状態で結合させることに成功し、in vitorではATP濃度の違いを検出することに成功している。また、微小容器内に小数分子の酵素を閉じ込めラマンで検出する方法の開発では8分子程度のキチナーゼの活性をラマンでとらえることに成功している。今後、開発した顕微観察装置での観察を進めていく。蓄積されうる細胞内センシングで得られるデータは空間、時間、スペクトルの多次元の情報を持つ。これまでのスクリーニングで得られた基礎データをもとに細胞内から得られたデータを網羅的に解析し、定量的かつ有益な情報を抽出する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内タンパク分析イメージングの技術開発を進める。細胞内でのタンパク質-タンパク質相互作用やタンパク質-薬剤の相互作用の検出が可能な機能性金属ナノ粒子プローブの開発、およびそれを利用した細胞内ナノ分析法の検討を進めていく。開発した様々な金属ナノプローブごとにラマン散乱の増強効果が高い最適な励起波長を用いて計測を行う。細胞内の生体分子や、細胞内に導入した薬剤を機能化したナノ粒子プローブにより検出すると共に、その空間情報および時間変化を測定する。 ATPプローブの開発に関しては、in vitroでの評価がほぼ完了したため、細胞内での評価を行う。具体的には、金コロイド上に取り付けたATPセンサータンパク質を細胞内に導入し、ATP結合による構造変化をラマンのシグナルで捉える。金コロイドが細胞内を移動するため、連続的にそのシグナルをモニターすることで、細胞内のATP濃度の局所分布を調べる。それによって得られた知見を元にプローブのさらなる性能の向上を図る。一方、微小空間中での酵素活性のラマンでの検出は、8分子程度のキチナーゼ分子の活性検出に成功している。これは、ラマン分光を用いた新たな高感度計測法となる可能性がある。そこで、ラマンを用いた酵素活性の定量法や他の酵素での活用、本計測の応用法の開発を行う。 また、pHなどの環境センサー分子を細胞内タンパク分析プローブに付加し、細胞内環境とタンパク質と薬剤・生体分子等との相互作用とを同時に検出しながら、細胞内イメージングを行う手法を開発する。また、細胞内でのタンパク質相互作用やタンパク質-薬剤の結合の検出、またその周囲の物理的、化学的環境を同時にセンシングするために、顕微鏡システムの自動化を行う予定である。さらに、前年度までに得られた金属ナノ粒子の非線形な分光特性を利用し、細胞内の分子検出の選択性と空間分解の向上も試みる予定である。細胞内タンパク分析の技術開発を進める。細胞内でのタンパク質-タンパク質相互作用やタンパク質-薬剤の相互作用の検出が可能な機能性金属ナノ粒子プローブの開発、およびそれを利用した細胞内ナノ分析法の検討を進めていく。開発した様々な金属ナノプローブごとにラマン散乱の増強効果が高い最適な励起波長を用いて計測を行う。細胞内の生体分子や、細胞内に導入した薬剤を機能化したナノ粒子プローブにより検出すると共に、その空間情報および時間変化を測定する。また、pHなどの環境センサー分子を細胞内タンパク分析プローブに付加し、細胞内環境とタンパク質と薬剤・生体分子等との相互作用とを同時に検出しながら、細胞内イメージングを行う手法を開発する。 また、細胞内でのタンパク質相互作用やタンパク質-薬剤の結合の検出、またその周囲の物理的、化学的環境を同時にセンシングするために、顕微鏡システムの自動化を行う予定である。 さらに、前年度までに得られた金属ナノ粒子の非線形な分光特性を利用し、細胞内の分子検出の選択性と空間分解の向上も試みる予定である。
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