研究課題
地球上の全ての生物の進化は、飢餓や低栄養に対する適応の歴史であり、生物の寿命はこれらの環境因子によって規定されてきた。実際、低栄養やそれに伴う免疫力の低下、感染症がヒトの死亡の主因を占めていた。ところが20世紀後半より、歴史上経験のない過栄養の時代を迎え、その過栄養が生活習慣病などの疾患を引き起こし、寿命短縮の原因になっている。このような短期間の劇的な栄養・環境の変化によってもたらされる問題の抜本的解決には、様々な栄養・環境状態における生物の普遍的生命現象の根源の俯瞰的解明と、その破綻メカニズムの理解が不可欠である。本研究課題では、健康長寿のための普遍的代謝経路の解明とその実現への方法論を確立することを目的とする。1、寿命延長効果をもたらす高等生物に適したカロリー制限の科学と方法(栄養素の量と質)を明らかにする。摂取カロリーの最適な「量」と「質」の結果を組み合わせ、炭水化物、タンパク質、脂質の割合を変動させ、寿命効果を検討した。様々な栄養条件下での寿命関連臓器や代謝関連臓器における生物学的反応やその代謝調節機構を明らかにし、健康長寿に最適な摂取カロリーバランスと、栄養シグナルを総合的に解析した(論文投稿準備中)。2、健康長寿を制御する普遍的シグナルを同定する。これまでの結果を統合的に解析し、最終的に健康長寿を制御する普遍的シグナルを同定し、重要な分子を絞み、遺伝子改変マウスを作製に着手した。3、代謝制御経路を基盤にした健康長寿実現に向けた科学と方略を確立する。作製したヒトAdipoR発現マウスに新たに取得・選抜したAdipoR活性化低分子化合物を実際に投与し、抗生活習慣病効果を検討した。マウスおよびヒトへの効果、有効性を検討し、臨床に向けての基盤となるデータを取得した(論文投稿中)。前臨床として、マウスへの安全性試験、毒性試験を行い、開発候補品となる化合物の取得に成功した。
2: おおむね順調に進展している
申請時、予定していた研究項目((1)寿命延長効果をもたらす高等生物に適したカロリー制限の科学と方法(栄養素の量と質)を明らかにする。(2)健康長寿を制御する普遍的シグナルを同定する。(3)代謝制御経路を基盤にした健康長寿実現に向けた科学と方略を確立する。)のいずれの研究項目についても、それぞれ平成29年度に予定していた計画内容について、当初の計画通り進展している。全ての研究項目において、その成果について、論文投稿中および論文投稿準備中の段階のものが複数あり、順調に進展している。
平成29年度については、当初予定していた計画内容について、ほぼ達成し、当初の計画に沿って順調に進展している。そのため、本研究の推進において、研究計画に大幅な変更の必要性は低いと思われ、当初の計画通り、研究を推進する予定である。本研究課題のさらなる進展・加速を目指すべく、各研究者の実験の精度の向上とスピードアップを図り、目的を早期に達成したいと考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 13件) 図書 (8件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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