研究課題/領域番号 |
26220004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
多賀 厳太郎 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (00272477)
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研究分担者 |
山田 重人 京都大学, 医学研究科, 教授 (80432384)
藤本 仰一 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60334306)
佐藤 譲 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (30342794)
高桑 徹也 京都大学, 医学研究科, 教授 (40244933)
高橋 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50197159)
保前 文高 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (20533417)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 胎児 / 新生児 / 乳児 / 脳 / NIRS / MRI / 複雑系 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
ヒトの胚子・胎児から新生児・乳児に至る脳の構造と機能の発達について、引き続きイメージング・行動・理論モデルの研究を推進した。具体的には、以下のような取り組みを行い、成果を得た。 (1) 代表的な標本のMR顕微鏡で撮像された画像より、終脳・間脳・中脳・橋・小脳・延髄の領域分割を試みた。その結果、解剖学的なランドマークに基づいた境界設定を行うことが可能となり、カーネギー発生段階ごとに19のヒト脳3Dモデルを作成することができた。また、胎児期の16-40週齢における脳溝の発達を定量化した。胎児標本のCT画像約30個体の頭蓋骨のセグメンテーションを行った。 (2) 脳血流動態についてfNIRSを用いた計測を、NICUに在院中の満期産児・後期早産児・前期早産児に加え、満期産児で在院歴のない2-6ヶ月齢児で実施した。酸素化および脱酸素化ヘモグロビンの変化の位相差をhPodと名づけこの指標によって脳の発達を鋭敏に捉えられることを発見した。 (3) 睡眠中の2~3ヶ月児でfNIRSデータの分析より、機能的ネットワークが、動睡眠・静睡眠の違いに応じて変化することが明らかになったため、さらに、fNIRSと脳波や他の生体信号の同時計測を開始した。また、3ヶ月児に音声を提示しながらfNIRS計測をすると、自発活動と同様に左半球の下前頭回がハブ性を示すことを見出した。 (4) 発達期の脳の自発活動と代謝の変動に関するモデルの構築を行なった。また、胎児期の脳の形態形成の機構を調べるため、連続体力学に基づき成長する板の理論を検討し、大脳皮質の二次元断面に対応する数値計算模型を構成した。さらに、神経場のモデルの情報処理能力の性質とその空間変形や長距離ネットワークによる効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ヒトの脳の発達に関して、胚子・胎児、新生児・病的児、乳児、理論モデルの4つの領域にまたがる課題を含んでいる。それぞれの領域での研究が進展するとともに、密な協力・連携の実施による、重要な成果も得られている。新生児・病的児の研究では、脳の発達を鋭敏に示す新たな指標を発見し、インパクトの高い報告を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
胚子・胎児期に形成された脳の構造と新生児・乳児における脳の機能発現の関係性を包括的に理解するために、これまでに得られたデータと理論的な研究の融合を目指す。 (1) 胚子・胎児の脳のマクロな形態の発達について、作成した発生段階ごとの19のヒト脳3D標準モデルを用いて、幾何学的分析手法を用いた解析を行う。胎児期の脳溝の発達や頭蓋骨の発達等についても分析を行う。 (2) 新生児の脳の発達については、fNIRSを用いて、hPodが示す血流・代謝の発達と機能的ネットワーク形成の関連性を調べる。特に、附属病院のNICU(新生児集中治療室)で、低週齢の早産児における計測を実施し、発達の初期過程を明らかにする。hPodの発達による変化の機構を明らかにする神経血管結合に関する動力学モデルの検討を行う。 (3) 乳児期の脳の機能発達に関しては、fNIRS、脳波に加え、眼電図・筋電図・心電図・呼吸・体温のような生体信号や行動計測から、多角的に脳活動の状態を定量化し、状態遷移を含めたダイナミクスを詳細に調べる。その上で、自発活動と刺激誘発活動との相互作用の機構を明らかにする。 (4) 脳の発達に関する理論研究においては、脳の発達におけるエネルギー代謝と活動生成をつなぐ動力学モデルを構成し、計算機シミュレーションを行う。また、連続体力学モデルによる大脳皮質の成長と折れ畳みの機構について検討する。さらに、曲面での神経活動の反応拡散モデルや長距離結合を持つ神経場モデルについてさらに詳細に検討し、空間変形を伴う神経場とネットワーク構造の相補性を明らかにする。
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