研究課題/領域番号 |
26220104
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田路 和幸 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (10175474)
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研究分担者 |
下位 法弘 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (40624002)
佐藤 義倫 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (30374995)
鳥羽 隆一 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (70508100)
高橋 英志 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (90312652)
横山 俊 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (30706809)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 高結晶カーボンナノチューブ / 電界電子放出 / 低炭素化技術 |
研究実績の概要 |
電界電子放出素子を応用した省エネルギー型平面発光デバイスを基礎構築するべく、H27年度は1.電子源となる単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の導電特性のFE特性への影響評価、2.高結晶性SWCNTを用いた湿式プロセス対応型均一分散制御技術の確立、3.高結晶性SWCNTのFE特性信頼性評価、4.残光特性制御蛍光面の基礎設計構築について集中的に実施した。 これらの4項目の詳細は次の通りである。1.金属型/半導体型SWCNTの高結晶化及びFE特性評価。・SWCNTの高純度高結晶化処理のためにアーク放電で生成したSWCNTを使用しているが、金属型と半導体型導電性を有するCNTが混在する。各々の導電性を有するSWCNTをTG-MSなどによりモニターしながら高結晶化し、FE特性を評価することに成功した。その結果FE特性において導電性に有意差が見られないためSWCNTを分離する必要性が無いことを見出した。2.高結晶性SWCNTの均一分散技術確立。・均一な湿式分散が困難な高結晶性SWCNTをホモジナイザー、ジェットミル技術の併用及び段階分散の導入により均一に湿式分散する技術を確立した。数~10本程度のSWCNTが凝集した小バンドルでの均一分散に成功しており、SWCNT分散塗料のポットライフ(再凝集による二次凝集物の沈降)も良好である。3.高結晶性SWCNT信頼性評価。・結晶欠陥が殆ど存在しない高結晶性SWCNTをFE電子源として用いたFEカソードデバイスについて、30mA/cm2以上の電流密度で1000時間以上の連続駆動を達成した。カーボン材料を用いたFEデバイスとしては世界初の成果であり、SWCNTを用いた電子デバイス実用化への可能性が高まった。4.長残光及び高輝度蛍光体の併用による輝度効率向上。・電子照射型蛍光体について、蛍光時間半減期が10ミリ秒の蛍光体(Zn2SiO4)と高輝度効率蛍光体(ZnS:Tb)の混合型蛍光面の作製で、従来蛍光体より輝度効率を約90%向上することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
省エネルギー型平面発光デバイスの構築のためにはSWCNTを用いたFE特性の信頼性検証が必要不可欠である。我々はSWCNTの高結晶化により、FEデバイスとしては今まで誰も成し得なかった1000時間超の直流連続放電に成功した。また電子放出時のエネルギー損失がほぼゼロであり、高結晶性SWCNTのバリスティックな導電性の発現も確認でき、高結晶性SWCNTをFEデバイスに応用した基礎検証に進展を得ることに成功した。 また発光面については発光消費エネルギーの大幅削減を検討している。可視域帯の波長を放出する蛍光体について半減期10ミリsec程度の残光特性を有する蛍光体を用い、光束量を増幅する発光メカニズムの基礎特性確立にも成功した。 本研究の目的である省エネルギー型平面発光デバイスの創製において、デバイスを構築するための基礎技術を確立する研究計画に進捗が見受けられた。よっておおむね順調に研究は進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、・省エネ駆動に特化した電子放出駆動制御素子の基礎設計、・発光デバイスの真空封止技術の基礎確立が挙げられる。そのための方策として下記研究事項を推進していく。 素子の基礎設計に関しては、平成27年度で得られた高結晶性SWCNTのFE特性の結果を応用し、平成28年度は結晶性を保持しつつ均一かつ孤立に分散したSWCNT分散膜の構築研究に着手する。 真空封止技術確立に関しては、安定した真空を確保するプロトタイプの小型真空容器の基礎構築技術確立を目指す。 これら研究により、電子源の真空パネルへの素子化ならびに発光のための省エネ化のための基礎技術を確立していく。
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