研究課題/領域番号 |
26220201
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 重信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)
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研究分担者 |
田原 優 早稲田大学, 付置研究所, 助教 (80707399)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 体内時計 / 概日リズム / 時間栄養学 / 代謝 / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
体内時計作用栄養学の視点で以下の実験成果を得た。光照射を22-26時間の周期で与えると体内時計がリセットされることと同様に、食餌パターンのリセットも光と同様の周期であることが判明した。食餌内容に関しては、ω3脂質であるDHAやEPAを含む魚油やこれらの脂肪酸が顕著な体内時計リセット効果を生み出すことを発見した。また、漢方薬・生薬では猪苓や柴胡などに強力な体内時計リセット効果を見いだした。現在、これらを含む漢方薬についてもその効果を検討中である。タンパク質・アミノ酸に関する実験では、胃からの排出速度が速い酸性乳が、対照群の乳に比較して、肝臓のPer2時計遺伝子の発現増大を示した。また、タンパク質100%食による体内時計リセットは、グルカゴン受容体拮抗薬ではブロックされなかったので、IGF-1による時計リセットである可能性が浮上してきた。ヒトの体内時計を調べる方法として、4時間おきに4-5本の髭の毛母細胞からmRNAを抽出し、Per3遺伝子発現リズムを見ることを提案した。夜型の人はリズム発現が不安定で、かつ、位相が後退していた。つまりヒトの体内時計作用栄養学の有効なツールとなることが分った。 時間栄養学の視点では以下の実験成果を得た。骨格筋や骨量に対する種々の食品成分や運動の効果を調べた。マウスの後肢懸垂により骨格筋の低下ならびに大腿骨の骨体積や骨密度が低下することが知られている。これらの低下に対して、朝の輪回し運動は夕の運動に比較して、より効果的であった。別のモデルとしてヒラメ筋と腓腹筋の腱切除による足底筋の代償性肥大を開発した。1日量は一定にし、高タンパク質食を朝に与えた腱切除マウスは、夕に与えた群に比較して、顕著な筋肥大をもたらした。またこの効果は、分枝鎖アミノ酸であるBCAAの高含量を朝食に与えても見られた。以上、朝運動とBCAAを含む高タンパク質食が、サルコペニア予防には良いことが分った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体内時計作用栄養学において、機能性食品の中で、DHA・EPAの体内時計に対する作用を明らかにでき、論文発表ができたことは、研究が順調に進んでいることになる。また、生薬と漢方薬についても、実験はほぼ終わり、猪苓と柴胡を同定できたことも順調である。さらに、ヒトの研究に必須である、髭を用いた体内時計モニター系を確立できた成果は大きい。また、夜遅い食事やストレスが体内時計を顕著に乱すという発見は、新聞社やNHKのニュースに取り上げられ、社会的インパクトを与えた。また時間栄養学において、筋委縮、代償性筋肥大、廃用性骨粗鬆など、多くの筋・骨のモデル系を開発し、これを利用して種々の機能性食材を評価できた。特に、高タンパク質や分枝鎖アミノ酸の摂取時刻が筋維持に重要であるという先駆的な発見をした。また、運動負荷が朝に有効であるという、全く新規な発見ももたらされた。以上、研究の達成度は十分であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
体内時計作用影響学では、タンパク質やアミノ酸の作用機序を新しいシグナル系IGF-1で説明できるデータを取得し、従来インスリンと考えられた系にブレイクスルーをもたらす研究として位置付ける。またヒトの研究では、髭を用いた研究方法が確立できたので、これを用いて、朝型・夜型、社会的時差ボケとの関係を明らかにする。また、高齢者と運動機能との対比なども進めていくとともに、本方法を用いた研究の論文化を加速させる。時間栄養学では、肥満メタボリック関係では、茶カテキンEGCG,イヌリン、γオリザノールをターゲットにして、朝・夕のいずれの投与が効果的かを明らかにする。また、サルコペニア・骨粗鬆症に対しては、タンパク質・アミノ酸、卵殻カルシューム、イヌリンをターゲットにして、朝・夕いずれの摂取が効果的であるかを明確にし、その作用機序を明らかにする。ヒトでは、まず茶カテキンの血糖上昇抑制効果を、朝・夕の摂取で調べ、基礎データを取得する。
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