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2017 年度 実績報告書

時間栄養学を視点とした機能性食品成分の探索と応用研究

研究課題

研究課題/領域番号 26220201
研究機関早稲田大学

研究代表者

柴田 重信  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10162629)

研究分担者 折原 芳波  早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60450623)
高橋 将記  早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助手 (30711189)
研究期間 (年度) 2014-05-30 – 2019-03-31
キーワード体内時計 / 栄養素 / 食事パターン / 時間栄養学 / メタボリックシンドローム / サルコペニア / ヒト介入試験
研究実績の概要

腸内細菌と体内時計リセット効果との関係について調べた。腸内細菌は短鎖脂肪酸(SCFA)を産生することが知られている。これらのSCFAは種々のシグナルとして働き、肥満防止、免疫系の調節などに役立っている。そこで、SCFAの投与が、あるいはSCFAの産生増大を引き起こす水溶性食物繊維としてセルビオースのPer2::Lucマウス末梢体内時計の位相変容作用について調べた。その結果、SCFAやセルビオースの非活動期の2-3日間投与は、肝臓、腎臓の体内時計の位相を前進させた。従来より、末梢体内時計の食餌によるリセットには、インスリンシグナル系が重要であることを報告してきた。ところが、糖尿病になるとインスリンの分泌不足、インスリン耐性が出現し、シグナルとして使えなくなる。また近年広く認知された低炭水化物食やあるいは糖尿病治療食は炭水化物含量が少ないため、インスリンンのシグナルは使いにくい状態になっている。そこで、高タンパク質による末梢体内時計リセットにはどのようなシグナルが使われているかにつき調べた。その結果、タンパク質食ではインスリンではなくIGF-1の血中や肝臓での増大が確認された。ストレプトゾトシンによる1型糖尿病マウスモデルでも、IGF-1シグナルを利用した体内時計リセット作用を見出すことが出来た。
髭のPer3、Rev-erba、Rev-erbb遺伝子発現リズムを指標として、朝型、中間型、夜型による違いを調べた。体内時計が遅れている週明けの月曜日と、週の終わりの金曜日で時計遺伝子発現リズムに変化があるか否かについて調べた。その結果、朝型は月・金のいずれにおいても、類似した波形でコサイン曲線を示した。一方、夜型と一部の中間型は月と金で大きく波形が異なり、振幅全体が低下する被験者が多数いた。つまり、夜型は体内時計が週を通してリズム性を失う可能性が強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

体内時計に対する化合物のスクリーニングも順調に進んでおり、機能性の食材に使われている、ノビレチン、タンゲリチンが体内時計の周期を延長させ、振幅を増大さ、さらに4‘デメチルノビレチンやN陳皮など実際の食材として直ぐに開発できるとこまで来ていることより、研究が順調に進んでいることになる。また、腸内細菌と体内時計関連の研究も急速に進めており、水溶性食物繊維がSCFAを介して末梢時計のリセットに寄与することを明らかにし、IFが高い雑誌に成果を発表できた。また、食事性の末梢時計リセット機構を糖尿病にまで進めた。1型糖尿病モデルマウスでは高タンパク食でもリセットでき、その時にIGF-1という全く新規なシグナルを使うことが分かった。これも論文発表ならびプレスリリースを行い、反響を得ることが出来た。さらに、ヒトの研究に必須である、髭を用いた体内時計モニター系を確立できたので、最近注目されている社会的時差ボケとの関連で研究し、論文発表予定(revised)であり、夜型化社会に警鐘を鳴らすことが出来た。このよう順調に研究成果を出すことが出来ている。
また、ヒトの連続的血中モニター系の確立や糞便からpH測定、SCFA測定、腸内細菌叢の多様性解析などの方法論の確立ができたので、次年度はヒトの介入試験を大きく進めることが可能となった。また、ヒトの介入試験で、タンパク質の朝摂取と体内時計の位相の関係、筋重量や筋力との関係の予備試験もスタートしており、ヒト介入試験は強力に進めること可能となった。

今後の研究の推進方策

本年度は最終年度であるので、まず、ヒトの介入研究を強力に進めていく。マウスの基礎研究で朝食のタンパク質でも体内時計よくリセットしたことと、朝食の疫学研究でタンパク質の摂取量が少ないことが分かっているので、これをヒトで実証研究する。特に大学生などは夜型化が進み、朝食欠食も多くいるので、朝食時に乳製品化合物を摂取させた。この髭でモニターしている体内時計遺伝子発現リズムと、唾液中のメラトニン、コルチコステロンのリズムと、食事調査・運動モニターとの相関を解析する。また、マウスの後肢懸垂あるいは、アキレス腱切除による筋肉の回復や肥大が朝食高タンパク質を与えることにより加速されること、また高齢者でも朝食にタンパク質食の摂取が少なく、夕食に多いので、高齢者を対象として、ヒトの介入試験で朝食あるいは夕食に高タンパク質を与えると、筋量、筋力、歩行速度、歩行数などがいずれの食事の介入で増大・回復するか調べる。
ヒトを対象とした連続的血糖モニターと腸内菌叢の解析が確立できたので、水溶性食物繊維の難消化性デキストリン、イヌリン、さらにゴボウ、菊芋などを朝食時に摂取する群と、夕食時に摂取する群を用意し、いずれが、血糖値スパイク抑制にあるいは、腸内細菌叢の多様性維持に重要であるかを明らかにする。
ノビレチンやその類縁体が体内時計機構に強く影響するので、これらの化合物のヒトの体内時計に対する作用を調べる。髭の毛母細胞には真皮の組織を同時に取ることになる。またコラーゲンの合成酵素や分解酵素の遺伝子発現にはリズム性が見られることから、これらの遺伝子発現をノビレチン類が制御する可能性を調べる。さらに、シフトワークや社会的時差ボケがあるヒトのコラーゲン代謝のリズム性のコントロールを通して、皮膚の不調を軽減する方策を見出す。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件)

  • [国際共同研究] UCLA(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      UCLA
  • [国際共同研究] SP(Singapore)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      SP
  • [雑誌論文] Circadian clock-dependent increase in salivary IgA secretion modulated by sympathetic receptor activation in mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Wada M, Orihara K, Kamagata M, Hama K, Sasaki H, Haraguchi A, Miyakawa H, Nakao A, Shibata S.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: 8802

    • DOI

      10.1038/s41598-017-09438-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Age-dependent motor dysfunction due to neuron-specific disruption of stress-activated protein kinase MKK7.2017

    • 著者名/発表者名
      Yamasaki T, Deki-Arima N, Kaneko A, Miyamura N, Iwatsuki M, Matsuoka M, Fujimori-Tonou N, Okamoto-Uchida Y, Hirayama J, Marth JD, Yamanashi Y, Kawasaki H, Yamanaka K, Penninger JM, Shibata S, Nishina H.
    • 雑誌名

      Scientific reports

      巻: 7 ページ: 7348

    • DOI

      10.1038/s41598-017-07845-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Polyporus and Bupleuri radix effectively alter peripheral circadian clock phase acutely in male mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Motohashi H, Sukigara H, Tahara Y, Saito K, Yamazaki M, Shiraishi T, Kikuchi Y, Haraguchi A, Shibata S.
    • 雑誌名

      Nutrition Research

      巻: 43 ページ: 16-24

    • DOI

      org/10.1016/j.nutres.2017.05.001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Age-related circadian disorganization caused by sympathetic dysfunction in peripheral clock regulation.2017

    • 著者名/発表者名
      Tahara Y, Takatsu Y, Shiraishi T, Kikuchi Y, Yamazaki M, Motohashi H, Muto A, Sasaki H, Haraguchi A, Kuriki D, Nakamura TJ, Shibata S.
    • 雑誌名

      NPJ Aging Mech Dis

      巻: 3 ページ: 16030

    • DOI

      10.1038/npjamd.2016.30

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Potent synchronization of peripheral circadian clocks by glucocorticoid injections in PER2::LUC-Clock/Clock mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Kamagata M, Ikeda Y, Sasaki H, Hattori Y, Yasuda S, Iwami S, Tsubosaka M, Ishikawa R, Todoh A, Tamura K, Tahara Y, Shibata S.
    • 雑誌名

      Chronobiology International

      巻: 13 ページ: 1-16

    • DOI

      org/10.1080/07420528.2017.1338716

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Role of Circadian Rhythms in Muscular and Osseous Physiology and Their Regulation by Nutrition and Exercise.2017

    • 著者名/発表者名
      Aoyama S, Shibata S.
    • 雑誌名

      Frontier Neuroscience

      巻: 11 ページ: 63

    • DOI

      10.3389/fnins.2017.00063

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 時間栄養学~基礎から臨床まで~2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      益社団法人日本メディカル給食協会 第3回関東信越支部連絡会
    • 招待講演
  • [学会発表] 体内時計と健康―臓器から皮膚まで2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      日本化粧品技術者会大阪支部 第207回講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Chrono-nutrition and -exercise studies from mice to human2017

    • 著者名/発表者名
      Shigenobu Shibata
    • 学会等名
      The6th Annual ⅢS Symposium in Tsukuba
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 時間栄養学の視点からみたフロボノイドの作用2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      ノビレチン研究会 第1回学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 時間栄養学の魅力2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      第4回日本薬膳学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 糖尿病治療と時間栄養学の可能性2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      第2回KFSmeeting
    • 招待講演
  • [学会発表] 腎疾患指導に携わるスタッフのための時間栄養学2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      第4回腎と栄養研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 時間栄養学2017

    • 著者名/発表者名
      柴田重信
    • 学会等名
      日本機能性食品医用学会 教育セミナー2017
    • 招待講演
  • [学会発表] Chrono-nutrition and chrono-exereise approaches to obesity and locomotive syndromes2017

    • 著者名/発表者名
      Shigenobu Shibata
    • 学会等名
      2nd CHRONOBIOLOGY FORUM and 2017 conference of Chinese Society for Biological Rhythms
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-28  

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