研究課題
旧英領インドの現ミャンマー領、バングラデシュ領内の日降水量データのデジタル化、旧満州国時代の中国の日降水量・気温データ、19世紀後半のフィリピンの日気象データ、日本の関東地方の明治・大正期の区内観測所の日降水量データ等のデジタルデータ化を進め、旧英領インドの現ミャンマー領の日降水量データの原本との照合による品質チェックを完了させた。旧英領ビルマ時代の1940年代、1950年代初頭期の日降水量データを新たに発見し、業者によるデータ入力を進めた。過去100年以上にわたる日本への台風の上陸状況、フィリピンにおける夏季モンスーンの開始・終了時期、インド北東部のチェラプンジにおける降雨変動、インドにおける降雨の季節変化の長期変動、日本の関東地方における豪雨発生の長期変化傾向、日本全国での冬季の低温による死者数の長期変化等について解明した。また最近数十年程度の期間については、バングラデシュにおける降雨の季節内変動機構、日本の梅雨季における降雨特性の長期変化、暖候季の降雨特性の季節変化、インドシナ半島におけるプレモンスーン季の降雨とモンスーン開始期との関係、南シナ海におけるモンスーン開始時期の変動と台風発生との関係、冬季の東南アジアでの豪雨発生の、南シナ海での乾季の吹き出しと熱帯擾乱の状態による経験的予測手法、インドネシア東部の島々における極端降水の発生とENSOとの関係等を解明した。また明治時代から終戦までの水路部および海軍気象部における気象観測体制の歴史を解明した。得られた研究成果は、日本地理学会、日本気象学会、日本地球惑星科学連合大会、Atmospheric Circulation Reconstuction on the Earth (ACRE)、米国地球物理学会連合(AGU)、米国気象学会(AMS)などで発表したほか、2017年の日本地理学会春季大会でシンポジウムを開催した。
2: おおむね順調に進展している
旧英領インド時代の日降水量データのデジタル化に関しては、インド熱帯気象学研究所の全面的協力を得ることができ、現ミャンマー領のデータの原本照合による品質チェックをほぼ完了した。またフィリピンの日降水量や気象データ、日本占領時代の中国東北部、日本の区内観測所データについてもデータのデジタル化が順調に進められ、データ解析が開始できる状態に近づいてきた。旧英領インド時代の現バングラデシュ領内についても、データの原本照合が約4割程度完了し、2017年度の前半には完了する目処が立った。国際的にはACREとの連携が強化され、新たなデータの発見やデジタル化の国際的な分担についても進展があった。データを利用しての研究成果に関しては、デジタル化が完了したデータを利用した100年以上の時間スケールでの論文が刊行され始めた。既存のデータセット等による過去50年程度の期間でのデータ解析も順調に進み、論文発表も順調に進められている。戦中期以前の日本の海外での気象観測の実態に関する著作の刊行も順調になされ、断片的でこれまでほとんどわかっていなかった戦中期の気象観測資料についても、解明が進んだ。インドやネパールなどでの国際ワークショップ開催により、現地研究者との連携も進んできた。以上により、研究はおおむね順調に進捗していると判断する。
日降水量データについて、現バングラデシュ領内の1891~1947年のデータと1950年以降のデータ、現ミャンマー領内の1891~1941年、1947~53年、1960年代以降のデータを接続し、インドやスリランカ、ネパール、フィリピン等における降雨特性や季節変化の長期変化を解明する。シビアローカルストーム等による気象災害についてもデータベースを構築し、モンスーン変動等との関係を解明する。世界最多雨地メガラヤ高原に隣接するバングラデシュ北東部の降水特性を解明し、バングラデシュにおける洪水予測にも資する降雨変動機構の解明を行うインドを含めた広域的なモンスーン変動を解明する。『帝国日本の気象観測ネッツとワーク』の発行を継続し、戦前戦中期にわが国が進めた気象観測ネットワークの状況を明らかにし、同時期の観測資料のデータベース化を完了させる。革命後の中国でのデータと接続して構築した100年気象データベースに基づいて、中国東北部(旧満洲)における水稲冷害のリスク評価、華北地方等における降水量変動等についての解析を進め、地球温暖化による気候変動と農業生産への影響を明らかにする。ACRE-Chinaとの連携を強化し、相互のデータ交換・共有による共同研究の構築をはかり、東アジアモンスーンの100年以上の期間での変動実態を解明する。すでに完成した100年以上の期間での台風データベースを活用し、モンスーン開始と台風発生との長期的関係、経路の長期変動等について解明する。日本の関東地方・四国地方を中心に区内観測所データのデジタル化を進め、降雨の長期変動傾向や極端降水等降水の質にも着目した気候変動解明を進める。最終的に地域別に創出された成果を包括し、アジアモンスーン域における120年間での変動実態を解明し、地球温暖化との関係を考察する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 13件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (66件) (うち国際学会 25件) 図書 (1件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (2件)
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