研究課題
国内で実施中のデータレスキュー研究活動をまとめ、国際的活動と連携するACRE-Japanを、本研究を中核として組織し、アイルランドと北京で開催された国際会議報告を国際共著論文にまとめた。またMAHASRIプロジェクトの後継となるアジアモンスーンに関する国際共同研究の立案を開始し、国内・国際ワークショップを主宰した。南アジアについては、旧英領インドの現ミャンマー・バングラデシュ領内の日降水量データの原本照合・品質チェックが完了し、過去120年スケールの長期変化傾向についての解析を進めた。インド北東部チェラプンジの104年間の日降水量データから、インド北東部のモンスーン活発期の発生機構を明らかにした。バングラデシュの1955年~1980年後半、インドアッサム州の1930年~1950年代後半までのシビアローカルストームデータベースを構築し、発生日の長期変動について解析した。スリランカの1860年代以降の日降水量データ収集した。東南アジアについては、フィリピンの過去115年間のモンスーン開始期および20世紀後半以降における降水の季節変化パターンの長期変動を解明した。日本とフィリピンの過去120年間の台風活動を調べ、近年の大きな被害を出した台風と類似の台風が過去にも上陸していたことを示した。中国については、日降水量データ(Zi-ka-wei)1890年代~1930年代のデジタル化を完了した。樺太、朝鮮、北支那における気象データの統合と検証を行い、東北部黒龍江省における温暖化解析と水稲冷害のリスク解析、東北部・内蒙古自治区の乾燥地帯における雨季の変動解析を行った。帝国日本の気象観測ネットワークに関する2冊の書籍を刊行した。東アジアの多彩な季節サイクルの長期変動解明を行なった。日本については、東海・四国地方の明治・大正期の日降水量データをデジタル化し、大雨発生の長期変化等を解析した。
2: おおむね順調に進展している
本研究を中核として国内の関連研究者と連携し、国際的なデータレスキュー活動と連携する日本全体でのACRE-Japanを組織することができ、国際的な活動に関する論文出版がされた。次年度ACRE会議の東京開催を誘致することに成功し、日本の活動を国際的にアピールできる場を設定することができた。旧英領インドの現ミャンマー・バングラデシュ領内の日降水量データ、1891~1939年の時代における中国の日降水量データ(Zi-ka-wei)、フィリピンの20世紀前半期のデータの紙媒体データのデジタル化をほぼ完了し、それらのデータを活用した本格的な解析に入ることができた。スリランカにおける長期間の日降水量データも入手し、インド亜大陸北東部のシビアストームデータベースも順調に作成が進んだ。日本の東海・四国地方の日降水量等のデジタル化も順調に進めた。帝国日本の気象観測ネットワークに関する2冊の書籍を刊行した。新たに利用可能になったデータを用いて、フィリピンにおける夏のモンスーンの開始期の長期変動や台風活動との関連、インド北東部のモンスーン活発期の発生機構、近年の大きな災害被害と類似した過去の極端気象事例などに関する研究成果を刊行した。日本においては、東海・四国地方の観測開始以来1925年までの区内観測所降水量観測原簿のデジタル化を進め、従前の気象官署のみのデータでは解明できなかった大雨発生の長期変化傾向の詳細な地域性が解明できる可能性が示された。また東海地方における大雨頻度の変動には、地球温暖化に伴うとみられる長期変化と共に、数十年規模での変動があることを見出した。戦後期については、バングラデシュの季節内変動による降雨特性の長期変化、フィリピンにおける降水の季節内変動パターンの長期変化、南シナ海における降雨の長期変化等を解明した。
旧英領インド、現バングラデシュ及び現ミャンマー領内、スリランカ、中国等の日降水量データを使用し、降水特性のトレンド解析、プレモンスーン・モンスーンの入りと明けなどの季節進行パターンの変化、季節内振動の卓越周期の変調や、ENSOやIODなどの外部強制力との関係等について、既存の1950年代以降のデータと接続して100~120年程度の時間スケールで解明する。それらの変動要因を海面水温データや地上観測データ、20世紀再解析などを活用して解明する。デジタル化・データベース化が完了していないインド東北部のシビアストームデータベース、新たにデータが発見されたインド北東部の茶園での気象観測データ、ラオス・カンボジアの主要地点および日本の東海・関東・四国地方等の日降水量データのデジタル化・データベース化をできるだけ早期に完成させ、長期変動の解明を進める。日本や東アジア域については、降水特性の季節や地域による多様性とそれに関わる大気場の因子を解明し、東アジア独特な季節サイクルの中での気候系とその長期変動の解明をはかる。戦中期における気象観測の実態解明とデータ入手も引き続き進め、気象観測史の中で戦前・戦中期の日本が果たしてきた役割を考察する。各地域研究班で得られた結果を比較しながら、過去120年間におけるアジアモンスーン全体の変動特性とその変動要因を明らかにする。11月に本研究を中核とした国際的なデータレスキュープロジェクトACREの毎年の国際会議及び関連するアジア域でのデータレスキュー活動に関する国際会議を首都大学東京で開催する。年度末には日本地理学会の春季学術会議で関連する国内研究と共にシンポジウムを開催し、本研究を含むこれまでの国内のデータレスキューの活動をまとめると共に今後の課題を明らかにする。本研究でデジタル化したデータを広く世界の研究者に公開する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 8件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (78件) (うち国際学会 42件、 招待講演 8件) 図書 (4件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (3件)
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