研究課題/領域番号 |
26220203
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
成瀬 恵治 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40252233)
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研究分担者 |
王 英正 岡山大学, 大学病院, 教授 (50372579)
高橋 賢 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50432258)
松浦 宏治 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (70443223)
入部 玄太郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (90284885)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 機械刺激 / iPS細胞 / 心臓幹細胞 / 初期胚 / 体外受精胚 / 着床前胚 |
研究実績の概要 |
I. メカノ心臓再生医療 2次元および3次元の培養系において、iPS細胞から自律的に収縮する心筋組織を作成した。またiPS細胞から心筋細胞への分化誘導に際し、線維芽細胞および血管内皮細胞と共培養することにより、心筋細胞の収縮力が増強されることを見出した。さらに伸展刺激と剪断応力を同時に付加する3次元の培養装置を開発した。2次元の培養系では、伸展刺激を与えて培養した心筋細胞はメカノストレスの刺激が無い細胞より早期に拍動を示すことが示唆された。また本研究成果から、機械的伸展刺激は、幹細胞より直接遊離するエクソソームが様々なパラクライン因子やmicro RNAを分泌することで、in vivoでの治療効果を向上させていることが明らかとなった。この新たな知見により、機械的伸展刺激により通常に培養している幹細胞からより多くのエクソソームの遊出を促進させ、cell-freeでの心筋再生医療の開発に繋げることが可能となった。
II. メカノ生殖補助医療 非生理的な環境が初期胚発育に及ぼす様々な影響を検討するため、マウス2細胞期胚から分化が生じる胚盤胞まで体外培養した場合と、その体外受精胚を胚盤胞まで培養した場合において、遺伝子発現網羅的解析を行った。培地の差異、メカノストレスの有無、胚培養数の違い、初期胚培養開始段階の差異により、胚発育、細胞死、環境ストレス、DNAやヒストン、細胞接合に関与する幾つかの遺伝子発現に有意差がみられた。興味深い傾向としては、着床前胚は培地成分や初期胚培養開始段階の差異は栄養外胚葉に働き掛ける作用があり、メカノストレスやAutocrine/ Paracrine作用では胚盤葉上層活性化に影響を及ぼす可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞から心筋細胞へと分化誘導する系の確立に時間がかかったものの、これは達成された。3次元の培養系で伸展刺激と剪断応力を同時に付加するシア・ストレッチチャンバーの作成も達成したため、今後はこれを用いて心筋分化誘導の効率化を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
I. メカノ心臓再生医療 本プロジェクトにおいて開発したシア・ストレッチチャンバーを用い、iPS心筋細胞へのストレッチ刺激負荷による3 次元培養技術を用い心筋ブロックの作製技術を確立する。目標厚み1 mm程度を実現するための細胞ブロックの培養条件を明らかにする。 血管前駆細胞に対するストレッチ・シェアストレス刺激条件の探索に関しては、iPS細胞から血管内皮細胞および血管平滑筋細胞への分化誘導を行う。伸展刺激 / 剪断応力を付加することにより、分化誘導効率の向上を図る。大型動物実験に応用展開できるlarge scaleの細胞伸展装置を作成し、幹細胞より抽出したエクソソームを各種心不全モデル動物に対して冠動脈内注入し、手技的安全性と治療有効性に関して引き続き検討を行う。
II. メカノ生殖補助医療 網羅的遺伝子発現から得られた結果を基に、シェアストレスや物質拡散状態を定量化して動的な胚培養環境と遺伝子発現産物を測定し、体外培養胚の品質と培養環境を定量的に議論できる系の構築を試みる。胚培養を効率的に行い、使い易く、胚発育を促進できるようなメカニカルストレス負荷装置の開発も検討する。指標が複数存在するために、様々なメカニカルストレス負荷装置を用いて培養した受精卵のマイクロアレイ解析で評価する計画である。マイクロアレイの構成については、胚盤葉上層と栄養外胚葉のマーカー遺伝子が挙げられる。研究目的の達成見込みについては、マウス胚を用いた評価ではメカニカルストレスと指標との関連について知見が得られると想定している。ヒト生殖補助医療への展開は次の研究になると考えている。生殖補助医療においては、効果的なメカニカルストレス負荷培養装置および胚品質に関係するマーカーとその評価手法を提案することを最終の目標とする。
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