研究課題/領域番号 |
26220204
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅 裕明 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (00361668)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | ペプチド / 天然物 / 翻訳 / リボザイム / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
本研究計画は、短鎖ペプチドを大環状化することで構造的に束縛(Constrained)した空間をもつペプチドライブライーを翻訳合成し、様々な触媒機能をもつペプチド分子を探索することに挑む。具体的には、(1)3次元空間を生み出す大環状ペプチド(1環~3環)ライブラリーの構築、(2)触媒活性種のセレクション、(3)個々の大環状ペプチド触媒の反応機構および構造の解明を達成目標に揚げた。また(2)については、(2a)レドックス触媒、(2b)キナーゼ、(2c)アシルトランスフェラーゼ、(2d)糖転移触媒、を具体的な活性種探索の候補に挙げた。平成26年度に達成した(1)の合成手法の成果をもとに、2環および3環の環状ペプチドライブラリーの合成し、(2)へ展開することに挑んだ。 平成26年度で試みた(2a)レドックス触媒のセレクションでは、低いながらも活性種の濃縮に成功したようにみえた。しかし、平成27年度前半の検討で、その活性種が目的のペプチド由来の活性ではないと判明した。その理由として、1環のペプチドでは十分に強固な3次元構造をもったペプチドライブラリーが構築できず、高機能な活性種の濃縮がかからなかったとの仮説を立てた。そこで、2環および3環の環状ペプチドライブラリーを構築し、(2a)、(2c)および(2c)の活性種探索を並行して進めることにした。 また、新たなライブラリーとして、DMAP類似体を側鎖に導入したアミノ酸を考案し、そのアミノ酸のペプチド鎖への取り込みを検討した。その結果、DMAP類似体側鎖をもつ大環状ペプチドが翻訳合成できることがわかった。そこでこのアミノ酸を含む、1環および2環の大環状ペプチドライブラリーを構築した。 現在、これらの新規ペプチドライブラリーを用いた(2a)、(2c)および(2c)の活性種探索を進めている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度で濃縮できたと考えていたレドックス触媒環状ペプチドが触媒機能をもっていなかったことから、平成27年度では、2環および3環の環状ペプチドライブラリーの構築に精力的に進めた。これはもともとの計画にも入っていたことで、計画の変更ではないが、軸足をより複雑な環状ペプチドライブラリーに移すことになった。また、当初の計画にはなかったDMAP類似体を側鎖に導入したアミノ酸の合成、およびペプチド鎖への翻訳導入効率の検討を進めたことにより、追加的な実験を進めた。したがって、全体としては概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では(2a)(2b)(2c)の研究に特化し、活性種の濃縮を試みる。もし、それが確認できた時点で、より複雑な活性種探索系である(2d)に着手する。
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