研究課題
本研究ではRNA修飾が関与する生命現象を明らかにするとともに、RNA修飾病の発症機構を解明することを目的とする。バクテリアリボソームの生合成において、数あるrRNA修飾のうち、RlmEによる23S rRNA上のたった一か所のメチル化修飾(Um2552)が、45S前駆体から50Sサブユニットへの成熟を促進する役割があることを示した(Arai et al., 2015)。これまで、非酵素的なリボソーム粒子のアッセンブリーについてはたくさんの研究がなされてきたが、この成果は、アッセンブリー因子の酵素活性によってリボソーム生合成の一部を再現した初めての知見であり、この分野の進展に大きなインパクトを与えた。また、このメチル化の修飾率が変化することで、リボソームの生合成が調節されるという非常に興味深い知見を得ている。この成果はこれまでにstaticでstableと考えられていたRNA修飾が、細胞内のメタボライト濃度を感知してダイナミックに変化することで、様々な生命現象に関わるという全く新しい概念を提唱するものである。tRNAのアンチコドンには多様な修飾が存在し、遺伝暗号の解読に重要な役割を担っている。私たちは、バクテリアtRNAのアンチコドンに存在する5-メトキシカルボニルメトキシウリジン(mcmo5U)の末端メチル化酵素CmoMを同定し、生育相依存的なメチル化修飾の変動を見出した。またこの過程で、新規の修飾塩基である5-methoxycarbonylmethoxy-2’-O-methyl-uridine (mcmo5Um)を発見した。これらの成果はNucleic Acids Research誌に掲載され、上位1~2%の論文に与えられるBreakthrough Articleに選定された(Sakai et al., Nucleic Acids Res, 2016)。
1: 当初の計画以上に進展している
RNA修飾の解析と生合成機構の研究に関しては、予想以上の成果が得られたと自己評価している。リボソーム50Sサブユニットの後期アッセンブリー過程において、RlmEによる23S rRNAのたった一か所のメチル化修飾(Um2552)が45S前駆体から50Sサブユニットへの成熟を促進する役割があることを示した(Arai et al., 2015)。これまでに非酵素的なリボソーム粒子のアッセンブリーは多くの研究がなされてきたが、この成果は、アッセンブリー因子の酵素活性によってリボソーム生合成の一部を再現した初めての知見であり、この分野の進展に大きなインパクトを与えた。また、様々な生育条件で細胞内AdoMet濃度が変化した際に、このメチル化が変動することで、リボソームの生合成が調節されるという非常に興味深い知見を得ている。この成果はrRNA修飾が、細胞内のメタボライト濃度を感知してダイナミックに変化することを示唆し、エピトランスクリプトーム研究に全く新しい概念を提唱するものである。さらに、新規メチル化酵素CmoMの同定と、新規の修飾塩基mcmo5Umを発見した成果はNucleic Acids Research誌に掲載され、上位1~2%の論文に与えられるBreakthrough Articleに選定された。
これまでに得られた成果をさらに発展させるとともに、新規RNA修飾構造の同定やRNA修飾酵素の探索に注力する。また、細胞内メタボライトを感知して変動するRNA修飾についての解析を進める。私たちは、呼吸鎖異常症の原因遺伝子であるMTO1とGTPBP1がミトコンドリアtRNAのタウリン修飾酵素であることが明らかにしている。これらの遺伝子に変異を持った患者由来細胞やノックアウトマウスの解析を行うことで、タウリン修飾の欠損が及ぼすミトコンドリアの機能異常を生化学的に解析する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 謝辞記載あり 13件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 9件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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