研究課題/領域番号 |
26220501
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊達 規子 (大久保規子) 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00261826)
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研究分担者 |
横山 彌生 (礒野彌生) 東京経済大学, 現代法学部, 教授 (60104105)
高村 ゆかり 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70303518)
柳 憲一郎 明治大学, 法務研究科, 専任教授 (80132752)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 公法学 / 環境政策 / 環境法 / 市民参加 / 環境民主主義 |
研究実績の概要 |
第3年度も,昨年に引き続き,①参加原則に関する国内外の動向調査・分析,②参加に関連した指標の分析・開発,③環境アセスメントに焦点を当てた参加制度の研究と指標の開発という,相互に関連した3つの柱に分けて研究を行い,文献研究,現地調査,5回の打ち合わせ会議・研究会に加え,11月に国際会議を開催した。 第1に,国際的な展開に関しては,文献調査を続けるとともに,アジア,欧州,北米,中南米の18か国から,オーフス条約司法アクセス部会長のダルポ教授,オーフス条約遵守委員会委員のヤンドロスカ教授等,第一線の研究者,裁判官,NGO,行政担当者,国際機関(UNEP)関係者を招いて国際会議を開催し,参加原則の最新動向について議論した。特に今回は,環境裁判所にも焦点を当て,5か国の環境裁判官による独立のセッションを設けた。そして,この会議の成果については,約300頁の雑誌の特集号等として公表した。 第2に,指標の開発・分析に関しては,SDG(持続可能な開発目標)指標のような新たな指標の分析を行った。また,2016年の国際影響評価学会において,「市民参加指標の国際比較」と題するテーマセッションを企画・実施し,環境アセスメントにおける参加の仮指標を公表し,意見交換を行った。 第3に,メコン流域のうち,カンボジア,ラオス,ミャンマー,タイおよびベトナムでは,環境アセスメントの参加ガイドラインづくりが始まり,2016年8月から10月までガイドライン案のパブリック・コメントが行われた。そこで,その内容を分析するとともに,このプロジェクトの責任者を国際会議に招へいし,今後の協力可能性についても意見を交わした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1に,参加原則の国際動向については,とくにアジアに関する研究が大きく進展した。本研究以外にも,中国,インド等,各国レベルでは参加原則の研究が盛んに行われているものの,アジア地域の比較研究としては,現時点で本研究が最も包括的なものである。世界的に見ると,環境裁判所,環境部,環境裁判官制度等を導入し,司法アクセスの強化を図る傾向(環境司法の専門化)が顕著であるが,本研究では,インド,タイ,インドネシア等の裁判所とも交流を図り,実務も含めた比較研究を進めており,この点では,当初の計画以上に研究の進捗が見られる。 第2に,本研究では,海外の既存の法的指標を日本に適用して考察するのではなく,指標の作成段階から積極的に参加し,各地域の実態を反映した法的評価指標の作成をめざしている。この数年,本研究以外にも,国際的に同種の研究や実務的な取組みがなされているが,本研究では,それらの動向を分析し,関係者との研究交流を図ることにより関連研究の最新成果を把握し,取り入れている。また,計画通り,環境アセスメントの参加に関する仮指標を作成し,国際学会において特別セッションを設けてその内容を発表して国際的な議論を行っており,この点でも,本研究は,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
第4年度は,まず,各国・地域の参加制度や運用実態について,オーフス条約とECLACの条約交渉のフォローアップを行う。ECLACでは2017年中の参加条約草案の確定がめざされていることから,その内容をオーフス条約と比較し,中南米の地域性がどのような形で表れているのかを分析する。 また,当初の計画通り,環境アセスメントの仮指標をアジアの調査対象国に試行的に適用し,適用上の問題点を探りつつ指標の改善を図る。これまでの懸案事項のうち地域性の反映については,共通指標の中に推奨指標を設け,また,共通指標のほかに選択指標を設けるという考え方に立って,選択指標の検討を始める。そのためには,共通指標で十分に考慮し得ない各地域の特徴がどのようなものであるのかについて知る必要があるから,アジア地域を対象に環境アセスメントの実態について引き続き調査・検討を続けるとともに,国際会議等でその成果を報告するなどして意見交換を行う。その際,メコン流域の参加ガイドラインのその後の進展にも留意する。さらに,実態を評価する指標については,本研究と並行して行われている諸外国の研究状況を引き続きフォローし,情報交換・共有を行って有益な示唆を探るとともに,環境民主主義指標(EDI)の実践指標の活用可能性と限界について子細に検討する。これに加え,発電所のような各国共通の課題について,アジアを対象に代表的な事例を統一の項目シートで評価するパイロット的な作業を行い,その具体的な可能性や有用性を検討する。 そのうえで,第5年度には,9月頃に研究成果をとりまとめるための国際会議を行い,その議論を反映させて参加原則の法的評価指標を公表することをめざす。
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備考 |
本研究プロジェクトの研究成果を公開し、社会へ還元するためにグリーンアクセスプロジェクトのウェブページを開設している。国内の参加法制・参加条例のデータベースのフォローアップ調査を行い、データベースのアップデートを行った。
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