研究課題/領域番号 |
26220503
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
石川 城太 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80240761)
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研究分担者 |
阿部 顕三 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (00175902)
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90265918)
古澤 泰治 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80272095)
柳川 範之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (80255588)
趙 来勲 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70261394)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | グローバリゼーション / 国際経済学 / リスク / 国際金融市場 / グローバルな環境問題 / 生産ネットワーク / 大規模災害 |
研究実績の概要 |
(課題1)国際金融市場に関わるリスク:資産バブルの崩壊が経済全体に与える影響を主に検討してきたが、それが貿易や資金移動等を通じてグローバル経済にどのような影響を与えるかを理論的に整理・分析した。知的財産に関して、特許に関するルールがグローバル経済にどのように影響を与えどのようなリスク要因として働くかを分析した。 (課題2)グローバルな環境問題:国際・国内輸送の数量と距離に応じて環境汚染が発生するような経済モデルを構築し、関税や国内の排出税が資源配分と経済厚生に及ぼす影響を分析して、国内生産された財の国内輸送の距離と輸入に伴う国内輸送の距離の長短が最適な税率に影響を及ぼすことを示した。独占的競争の貿易理論と環境政策を融合させた理論研究で、貿易自由化で汚染排出量、両国の環境税がどのように変化するのかを分析した。特に市場の大きさ・自国市場効果が重要であることが分かった。 (課題3)国際的な生産ネットワークに伴うリスク:国際生産ネットワーク拡大によるマクロ経済リスクの変化を、国際産業連関表と多国間リカードモデルにより構造推定する手法を開発した。暴力抗争による輸送リスクの増加が輸出を阻害する効果を推定するため、米墨間貿易取引と道路網のデータを整備し、構造推定手法を開発した。JIPデータベースの全面改定を進めた。日本の国際課税制度が多国籍企業の海外現地法人の企業活動に与えた影響を分析し、日本企業の海外流出や租税回避の活発化は確認できないことを明らかにした。 (課題4)大規模災害リスク:リスクに対する脆弱性が問題となる開発途上国の零細企業に着目し、ラオスで平成28年に行った労働者紹介実験の再調査を行った。その結果、法整備の未発達な開発途上国では雇用者と労働者との間の信頼関係が生産活動にとって重要なため、親族以外の人物を雇用するリスクが高く、そのことが企業拡大を抑制しうるという知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東アジアがパイオニアとなった国際的生産ネットワークを実現するためのリスク対応については、だいぶ研究が進んできた。経済の成り立ちに加え、FTAs締結など政策面の対応を評価できるようになってきたのは、大きな成果と言える。 現地調査で価値あるパネルデータを構築したり、構造推定の手法を開発したりして、今後の研究の基礎を固めてきた。また、理論モデルを用いた分析では、かなり一般的な結論を導くことができ、政策的な含意についても明らかになりつつある。これらの研究では、国際共同研究も活発に行っている。 研究成果については、数多くの学会や国際会議などで報告して、フィードバックを得ている。最終成果を査読付き国際学術雑誌に投稿し、すでにアクセプトされた論文や掲載された論文も多数ある。
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今後の研究の推進方策 |
現時点まで研究はおおむね順調に進展しているので、今後もこのペースで研究を推進していく。国際会議を主催・共催し、研究の第一線で活躍している内外の研究者を招聘して先端研究との連携を図る。 同時に、平成30年度が最終年度となることから、取りまとめに向けて議論を集中させ、必要に応じて補助作業者を増やすなどして、十分な成果がまとめられるようにする。 平成29年度に引き続き、プロジェクトメンバー全員によるワークショップを開催して、リスクそのものへの対処に関する新たな知見を共有するとともに、リスクを背景とした国際間の利害対立解決のための方策を議論する。
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