研究課題/領域番号 |
26220606
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
緑川 克美 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 領域長 (40166070)
|
研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
|
キーワード | 量子エレクトロニクス / レーザー工学 / アト秒科学 / 非線形光学 / 超高速光科学 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、我々の考案した赤外パルスを用いた2波長励起法による高強度単一アト秒パルスの高度化を目的として、高エネルギーフェムト秒励起レーザーの搬送波包絡線位相 (Carrier-Envelop-Phase: CEP)の安定化の原理実証を行った。 チャープパルス増幅増幅法 (CPA)により構成された超短パルスレーザーシステムにおいては、パルス内におけるCEPの安定化を行うためには、発振器で発生する高速のCEP揺らぎと増幅器で発生する比較的遅いCEP揺らぎの両方を制御する必要がある。発振器のCEP安定化は、既に技術的に確立されており市販の装置でも高度な制御が可能となっているが、増幅器内における振動等に起因する遅いCEP揺らぎの制御には、フィードバック周波数の関係から高繰り返し(数100Hz)のレーザーシステムを構成する必要がある。その為、シングルショットから10Hz程度の低繰り返しの高強度超短パルスレーザーシステムでは、これまで増幅器内で発生するCEP揺らぎを安定化することは困難であった。これに対して、今回、我々は低繰り返し増幅器を通過した増幅/非増幅パルスで構成されるハイブリッドパルス列から光学チョッパーを用いてレファレンスとなる非増幅パルスのみを抽出することで、必要なフィードバック周波数を確保することによりCEPを安定化する手法を開発した。 一方、リング型共振器を用いた新しい超高繰り返しアト秒パルス光源を開発においては、昨年度のYb:Lu2O3につづいてYb:CALGO結晶を作成し、その光学特性を評価した。その結果、吸収帯は十分に広く、励起半導体レーザーの多少の波長シフトにも対応できる。しかし、吸収には偏光依存性があるため、高出力化においては、半導体レーザーの偏光制御が問題となる可能性があることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、単一アト秒パルスの高出力化および安定において非常重要な技術である高強度フェムト秒レーザーのCEP安定化技術を開発し、その安定化に成功した。MHz級高繰り返しアト秒パルス光源の研究においては、Yb:Lu2O3につづいてYb:CALGO結晶を作成し、その光学特性を評価した。また、新たにThinDiskの貼り付け装置を構築し、ThniDiskモジュールを作成評価する体制を整えた。
|
今後の研究の推進方策 |
DCOPAで得られた赤外パルスとCEP安定化された高エネルギーチタンサファイアレーザーをサブフェムト秒で安定に同期されるシステムを構築し、高エネルギー2波長励起システムとしての性能を評価する。また、MHz級高繰り返しシステムでは、半導体レーザーの励起波長を969nmに変えてzero phonon領域での励起を行い、その性能を評価する。
|