研究課題
温度4.2 Kで動作する静電型極低温イオン蓄積リング(RICE)は,孤立分子イオンの振動回転状態の冷却過程に関する実時間追跡が可能である。N2O+分子イオンを蓄積し波長可変色素レーザーによる時間分解分光実験を実施した。N2O+は紫外レーザー光による前期解離過程に伴う中性生成粒子を検出することで精度の良い振動回転温度計として機能する。その結果最終的に1000秒以上に至るまでの振動および回転に関する詳細なスペクトルの変化の取得に成功した。振動状態は基底振動状態へ向けて数秒に及ぶ時間スケールで冷却が進むダイナミクスを初めて明らかになった一方で、回転遷移は自然放出寿命は数10秒以上のオーダーであるため、回転温度は1000秒を経ても数100Kを保つことが明らかになった。以上の結果は他の手法では実現されていない高精度スペクトルであり極低温リングの分光装置としての優れた性能と冷却過程の実時間追跡へ展開を示す重要な結果である。また、イオンビーム生成手法としてレーザーアブレーションイオン源を新たなに開発し、負クラスターイオンのRICEでの蓄積が可能となった。これによりRICEに蓄積するイオンの選択肢が大きく広がった。中性粒子ビームを合流導入することも本研究の目標の一つである。Csスパッターイオン源と光電離用の大出力半導体ダイオードレーザーアレイを組みあわせたシステムによって得られる中性ビームの強度を更に増強するため、レーザーキャビティを導入した。その結果中性粒子強度を一桁上げることに成功した。中性粒子検出のために超伝導遷移端センサーをマイクロカロリメータとして利用するプロジェクトも、最終的にTESをセンサーに接続する低温輸送システムの設計を終えた。以上のように本研究において計画していた様々な開発要素をほぼ完成あるいは完成に近づけることができた意義は大きい。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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JPS Conference. Proceedings
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