研究課題
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォーム(JEM-EF) に搭載する高エネルギー宇宙線観測装置(CALET:Calorimetric Electron Telescope)の開発・試験を開発メーカ及び筑波宇宙センター(TKSC)において実施して搭載装置を完成した。本年3月末にJAXAの開発完了審査をパスして、すでに種子島宇宙センター(TNSC)へ打上げ準備のため輸送が終っている。CALETは、平成26年度に「こうのとり」5号機による打上げが予定されていたが、NASAとのスケジュール調整等により打上が平成27年に延期されている。このようなスケジュールの変更は、交付申請段階から予測されていたことであり、本年度の打上げは確実に実施できる予定である。打上げ後の軌道上観測では、観測データはTKSC経由で早稲田大学に設置されたCALET運用センター(WCOC)にリアルタイムで伝送される。そして、WCOCでのミッション運用及び装置較正の実施及びデータ解析により、本研究の目的である、暗黒物質・近傍加速源の解明を含む高エネルギー宇宙線の加速・伝播機構研究の新展開を目指している。このため、WCOCにおける軌道上運用システムの構築をめざして、1)軌道上観測模擬データを用いた地上運用システムの開発、2)QLを用いたリアルタイム監視のための監視システムの開発、3)NASA,TKSCとの観測模擬データを用いたデータ伝送試験の実施、などを達成している。さらに、データ解析の多元化と高機能化を図るとともに、WCOC の高次データ保存の為のミラーサイトの構築を、立命館大学において実施している。そのほか、国際研究チームによる研究会合を約70名の参加により4日間に亘って早稲田大学、TKSCにおいて開催し、装置性能やデータ解析手法に関する研究実績が報告されている。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画段階で予定されていた初年度(平成26年度)における「こうのとり(HTV)」5号機による打上げは、NASAとの調整等により打上自体が延期されたが、このようなスケジュールの遅延は交付申請段階から予測されていたことであり、平成27年内の打上げは確実に実施できる予定である。この打上げ遅延による影響は、観測開始後の運用期間(2年間、目標5年間)が保証されていることから、期待される科学的成果に対して影響を与えるものではない。現在は、打上げにむけてすでに搭載装置は完成しており、筑波宇宙センター(TKSC)から射場である種子島宇宙センター(TNSC)に輸送されている。そして、輸送後の性能検証も現地で実施を終えており、搭載装置はすでに打上げのために、HTV-5への搭載作業が開始されている。したがって、観測装置そのものに関する作業はすでに研究者チームの手を離れており、打上げ後の軌道上観測の初期点検段階(チェックアウトフェーズ)に備えて、TKSC及び早稲田大学CALET運用センター(WCOC)における軌道上運用システムの整備を進めている。これらの軌道上運用システムは、「研究実績の概要」で述べたとおり、当初のスケジュールに則って開発が進行しており、ほぼ計画どおりのシステム構築が達成されており、打上げ後の軌道上運用に充分対応できる予定である。以上の研究進捗状況については、日本物理学会において合計19編(秋季大会:8編、年次大会:11編)の発表を行っており、JAXA宇宙科学研究所の宇宙科学シンポジウムでは合計8編(口頭:1編、ポスター:7編)の発表を行っている。そのほか、査読付き論文3編、国際会議では国外の共同研究者を含めて3編(その内、招待講演2編)の発表を行っている。
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」船外実験プラットフォーム(JEM-EF) に搭載する高エネルギー宇宙線観測装置(CALET:Calorimetric Electron Telescope)により,まだ観測が乏しいテラ電子ボルト(TeV) 領域の電子(+陽電子)、ガンマ線と“ ニー” 領域に迫る陽子・原子核成分の直接観測を実施する.CALETは平成26年度末に、JAXAにおける開発完了審査を終えており、平成27年中には打上げて、ISS軌道上で5年間(目標)の観測実施を予定している。軌道上の観測データはつくば宇宙センター(TKSC) 経由で早稲田大学に設置されているCALET 運用センター(WCOC) に伝送される。WCOCでのリアルタイムなミッション運用及び装置較正の実施と高次レベルデータ解析により,暗黒物質・近傍加速源の解明を含む高エネルギー宇宙線の加速・伝播機構研究の新展開を目指しており、今後の研究の推進方策は以下の通りである。1、CALET 打上げまでに,軌道上データの正確なシミュレーションにより、CALETからWCOCへ配信されるテレメトリデータを模擬し、軌道上装置較正や装置不具合検知を行うソフトの完備、及び定常運用をスケジュール化するソフトウェアの高機能化を達成する。2、WCOCにおける24時間運用体制の構築のため、運用に専念する研究員、連携研究者、研究協力者に充分な運用訓練を実施することにより、確実な運用体制を構築して長期間観測の実施を達成する。3、打上げ直後の初期運用(約90日)では 、装置機能の健全性のチェックとともに、最小電離損失に近い陽子の選択的トリガーにより、位置依存性・温度依存性を正確に理解したエネルギー較正方法を確立する.そして、高次データ解析を国際研究チームで遂行し、できるだけ速やかに所期の研究成果を国際会議等で発表する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (27件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Advances in Space Research
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http://www.crlab.wise.sci.waseda.ac.jp