研究課題
宇宙線の加速・伝播機構の体系的な解明と近傍加速源・暗黒物資の探索を主な目的としたCALorimeteric Electron Telescope (CALET)は、平成27年8月19日に「こうのとり5号機」に搭載されて打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟(きぼう)船外実験プラットフォームに設置された。その後、約45日のチェックアウト期間を経て、10月初旬より初期運用を開始し、2016年1月より定常運用に移行している。この間、現在までにすでに6ヶ月以上にわたって観測が継続的に実施されている。そして、今後は打ち上げ後2年間(目標:5年間)の観測により、研究目的の達成を図る計画である。観測データは、ISSからNASAのリレー衛星(TDRSS)を経由して、米国NASA/MSFCから筑波宇宙センター(TKSC)に伝送され、ネットワークを介して早稲田大学に構築した「Waseda CALET Operations Center(WCOC)」においてほぼリアルタイムでRaw Dataとして受信している。リレー衛星の不可視時間帯等に生じるテレメトリーの切断期間の観測データは、一旦ISS上のデータ記録装置に保管される。そして、1時間単位で欠損データ補完を行った観測データ(レベルゼロ:L0)を、科学解析用データとして受信している。Raw Dataは、軌道上観測運用のモニターやガンマ線バーストの速報のために利用し、L0データを用いて科学解析用の高次レベルデータの生成を行い、米伊を含む共同研究者に配布して国際共同研究体制でデータ解析を実施している。軌道上観測運用のモニターシステムや、L0データからの高次レベルデータ作成及び科学解析データ処理のシステムは、これまでの研究実績によりすでにほぼ完全な状態で構築されており、今後の科学成果の獲得に向けて極めて順調に研究が進展している。
1: 当初の計画以上に進展している
CALETは、当初より予想されていた1年間の遅延はあったものの、平成27年8月19日に無事打ち上げられ、その後の「きぼう」船外実験プラットフォーム(JEM-EF)#9ポートへの設置も順調に行われた。軌道上における観測開始まえのチェックアウトにおいても、地上で検証された性能がほぼ同様に維持されていることが確認され、平成27年10月初旬からの初期観測を開始した。そして、打ち上げ後90日間までの観測データにより要求されていた電子、ガンマ線、重原子核の各観測項目に関するミニマムサクセス条件を達成できていることが、宇宙科学研究所理学委員会において承認された。その結果、「現状のパフォーマンスにおいて,当初設定した科学目標を達成できる運用が可能と予想される」と判断されている。CALETプロジェクトとしては、JAXA有人宇宙技術センターにおける地上運用システムを含む定常運用移行審査を受け、平成28年1月より定常運用が承認された。初期観測開始後の観測運用状況は極めて順調で、初期段階ですでにTeV領域電子やガンマ線バーストイベントの観測に成功し、10月19日に初期検証状況の記者説明会をJAXAと早稲田大学の合同で実施している。そして、平成28年3月末までに、10 GeV以上の宇宙線イベントを1億例以上取得し、初期的な解析により約65万例の電子イベントを観測している。さらに、当初は予測されていなかった太陽活動に起因する地球磁気圏における”電子なだれ(REP)”現象の観測に成功し、GRLに投稿して受理されている。そのほかLIGOによる重力波観測に付随するガンマ線バーストの観測結果も得ており、近々論文の投稿を予定している。進捗状況の報告としては、国際共同研究として査読付き論文(3編)、国際会議プロシーディングス(11編)、国内学会発表(22編)、国外発表(4編、内招待講演3編)の発表を行っている。
CALETは平成27年8月に打ち上げられて以来、チェックアウトフェーズ、初期運用フェーズをへて平成28年1月より定常運用観測に移行しており、極めて順調に軌道上観測が継続されている。軌道上の観測データは筑波宇宙センター(TKSC) 経由で早稲田大学に設置されているCALET 運用センター(WCOC) に、Raw Dataとして数秒間で伝送される。WCOCではリアルタイムなミッション運用を実施して、装置状態をモニターするとともに、装置較正の実施と高次レベルデータの作成・解析を行う。そして、近傍加速源・暗黒物質の探索などによる高エネルギー宇宙線の加速・伝播機構研究の新展開を目指して、米伊との国際共同研究として以下の方策で今後の研究推進を行う。1)WCOCにおける24時間運用体制の継続のため、運用に専念する研究員、連携研究者、研究協力者により確実な運用体制を維持して今後数年間にわたる長期間観測の実施を達成する。2)最小電離損失に近い陽子(およびヘリウム)の選択的トリガーにより、位置依存性・温度依存性を正確に理解した装置較正方法を確立する.そして、装置較正済みのデータをもとに科学データ解析を国際研究チーム体制で遂行し、できるだけ速やかに所期の研究成果を国際会議等で発表する。研究成果が得られたものは論文を順次作成し、国際的に著名な学術誌に投稿するとともに、それらの成果は広く社会にもマスコミやWEBを通じて広報する。3)打ち上げ後2年間の観測により、電子、ガンマ線、原子核などの各観測項目についてJAXAで定義されているフルサクセス(TeV領域電子及び数100TeVまでの原子核観測による、A)宇宙線加速・伝播機構の定量化、B)近傍加速源及び暗黒物質のモデル制限、C)拡散ガンマ線のモデル制約、など)を達成し、さらに5年間の観測によりエクストラサクセスの実現に挑戦する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 14件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 14件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of Physics: Conference Series, (TAUP2015)
巻: TBD ページ: 1-5
Journal of Physics: Conference Series(24th ECRC)
巻: 632 ページ: 012023
10.1088/1742-6596/632/1/012023
Journal of Cosmology and Astroparticle Physics
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Proceedings of Science (ICRC2015)
巻: ID#581 ページ: 1-8
巻: ID#589 ページ: 1-8
巻: ID#613 ページ: 1-8
巻: ID#1194 ページ: 1-8
巻: ID#603 ページ: 1-8
巻: ID#595 ページ: 1-8
巻: ID#592 ページ: 1-8
巻: ID#1196 ページ: 1-8
巻: ID#627 ページ: 1-8
巻: ID#1182 ページ: 1-8
巻: ID#995 ページ: 1-8
http://calet.jp
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/equipment/ef/calet/
http://www.crlab.wise.sci.waseda.ac.jp
http://www.waseda.jp/top/news/29762