研究課題/領域番号 |
26220709
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
羽澄 昌史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20263197)
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研究分担者 |
片山 伸彦 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50290854)
長谷川 雅也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (60435617)
田島 治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80391704)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / 宇宙のインフレーション / 重力波 / ニュートリノ |
研究実績の概要 |
インフレーション宇宙仮説が予言する原始重力波を検出すれば,科学史上最大の発見になる.現在これを可能にする唯一の手段が,宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background,以下CMBと略す)の偏光観測である.本計画は,現在世界最高感度を達成しているPOLARBEAR-1 検出器のデータ解析とともに、より感度が6 倍高いPOLARBEAR-2 により,原始重力波の発見をめざす.と同時に,重力レンズ効果に起因するCMB 偏光を観測し,ニュートリノ質量和への制限を得る.本計画代表者が領域代表をつとめた科研費・新学術領域研究「背景放射で拓く宇宙創成の物理 ―インフレーションからダークエイジまでー」(平成21 年度―25 年度,領域番号2110)と接続する計画で,格段の発展が得られる. 平成27年度はPOLARBEAR-2検出器システムの開発を進めた。本番用の検出器システムで冷却試験を行い、所定の性能(18時間以上の低温保持時間)を満たすことを確認した。また、光学系の基本性能、検出器の基本性能を確かめた。POLARBEAR-1では2015年9月にパリティを破る新しい物理による宇宙論的複屈折効果の探索結果を発表した。光子と相互作用する新しい擬スカラー粒子などがあると、偏光が回転する効果(複屈折効果)が生まれ、相関がないはずのCMB偏光Bモード(パリティが負のモード)とEモード(パリティが正のモード)の間に相関が生じる。POLARBEAR-1で得られたCMB偏光データを用いて偏光の回転角を測定し、その相関を求めた。得られた制限は従来の結果を約15倍改善する世界最高の結果である。POLARBEAR-1では、このように、主たる科学目標以外の新しい物理の探索もおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本側が担当する測定器の開発については、概ね計画された目標を達成している。米国が担当している部分について若干の遅れが見られるが、これについては、平成27年度の研究進捗に関して言えば、今後の総合試験の効率化によって挽回が可能な範囲と考えている。以上から、平成27年度の研究については概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費を使用して進める開発については順調に目標を達成してきている。一方、国際協力の中で、米国が担当するTESボロメータの開発に関して、遅れが懸念されている。対策として、検出器システムの試験の一部は、チリで望遠鏡に設置した後に行うこととした。これにより、高エネ研での試験期間を短縮できる。例えば、全検出器の試験を想定していたフーリエ分光計による試験は、高エネ研ではサンプリング試験とする。期間の短縮とそれにより増えるリスクを評価し、最適解を求めて実行する。また、日本での試験を加速するために、当初予定より多くの人員が米国から派遣される予定である。
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