研究課題/領域番号 |
26220713
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小宮 剛 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30361786)
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研究分担者 |
横山 哲也 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00467028)
片山 郁夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10448235)
飯塚 毅 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70614569)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 初期地球 / 冥王代 / 初期太古代 / 消滅核種同位体進化解読 / 初期地球表層環境進化 / 生命必須元素 / 最古の岩石 / 最古の生命の痕跡 |
研究実績の概要 |
初期地球進化解読を遂行するため、本年度は各分析法の開発と太古代地質体の調査と岩石試料の採取を行った。前者に関しては、主に三つの事柄を行った。一つ目は本研究費でElement XRを納入した。二つ目は、超高精度Nd同位体分析を行うために、同重体干渉をおこすCeとSmを完全に除去する必要があり、岩石からNdを化学分離する方法を抜本的に見直した。従来はα-HIBAを用いるイオン交換法や溶媒抽出法が適用されてきたが、Ndの回収率が低くなる(< 80%)などの問題があった。そこで、KBrO3を用いて試料溶液中のCeを3価から4価に酸化し、それをEichrom社のLN Resinに通すことで、3価のNdとの相互分離を行う化学分離技術を新たに開発した。この技術によりCe/Nd<0.000012、Nd回収率>92%を実現し、初期地球試料の超高精度Nd同位体分析に適用可能な分離法を立ち上げることができた。三つ目は、冥王代物質をより定量的に研究するためにはジルコンのHf同位体分析は必須であり、太陽系の初期値を正確に決める必要があるため、石質隕石の高精度U-Pb年代とLu-Hf同位体分析を行い、太陽系形成時のLu-Hf同位体比を決定した。 地質調査に関しては、南アフリカ共和国のバーバートン緑色岩帯(35億年前)と北中国で地質調査を行った。前者では初期地球での生命・表層環境を解読するために、熱水循環に関連する珪化作用に着目した地質調査と岩石採取を行った。また、北中国アンシャン地域は北米―グリーンランド地域や南極以外で唯一38億年前の岩石が存在する地域で、初期地球全体の固体地球進化を解明するにはその岩石研究が必須となるため試料採取を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、化学分析関連では、高精度Nd同位体分析に向けてNdの化学分離法の開発、冥王代ジルコン研究のための高精度U-Pb年代決定法とHf同位体分析法の開発と太陽系の初期値を決めるための石質隕石の分析、ELEMENT XRの納入と当初計画以上に進展している。そして、高精度Nd同位体分析は、すでに隕石などにその適用を開始しており、初期地球物質にそれを応用するために、着々と進んでいる。ジルコンのU-Pb年代やHf同位体分析法も地球試料に適用可能な状態にある。以上の点を考えると、化学分析関連は当初の計画以上に進展していると思われる。 一方、地質調査関連については、今年度、南アフリカ共和国と北中国の地質調査を完了した。南アフリカでは珪化した玄武岩やコマチアイトの詳細な層序復元と岩石試料採取を行うことができ、また、北中国でも38億年前以前とされる花崗岩質片麻岩の詳細なスケッチと岩石試料採取を行うことができた。これらの試料の年代測定と化学分析を開始しており、こちらも当初予定以上に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、カナダ北西部、アカスタ片麻岩体の地質調査を行い、特に苦鉄質岩の分布と周囲の花崗岩質片麻岩との関係を詳しく調査する予定である。これまでの私たちの地質学的研究によって、その苦鉄質岩は花崗岩に構造的に切られており、より古いことが示唆されている。それを検証するとともに、さらに苦鉄質岩を補充する。また、そのアカスタ片麻岩体の苦鉄質岩の微量元素分析やRe-Os同位体分析を行い、苦鉄質岩の起源を探るとともに、年代決定を試みる。また、私たちが発見したカナダ・サグレック岩体の地球最古の表成岩の縞状鉄鉱層の微量化学分析による初期地球の海洋組成の推定や泥質岩や炭酸塩岩中の炭質物の同定とその炭素同位体値による最古生命の探索を進める。 一方、地球化学関連では、高精度Nd同位体分析に向けて高精度Nd同位体分析法の開発、冥王代ジルコン研究のためのジルコニウム同位体(92Nb→92Zr)分析法の開発とELEMENT XRの立ち上げと微量元素や白金族元素分析をそれぞれ行う。
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