研究課題
課題1では,細胞内在性のテロメアRNAを1分子レベルで可視化することを目的として, 蛍光プローブのTERRAに対する結合能を生化学的に測定した.次に,細胞内のTERRA上でプローブが蛍光を発することを蛍光顕微鏡により実証した.さらに,プローブがTERRA本来の機能を阻害しないことを,テロメアの長さを測定することにより示した.開発した蛍光プローブが,細胞内のテロメアを特異的に分子認識し,蛍光性タンパク質が再構成されることを実証した.超解像でBak凝集体を可視化し,Bak分子数を見積もる方法を開発した. 光活性型蛍光タンパク質mEos3でBakを標識した. Bak―mEos3をコードした遺伝子を凝集体プローブとして内在性Bak欠損細胞に導入した. 次にプローブ発現細胞にアポトーシス刺激として紫外線を照射し, 超解像イメージングにより蛍光観察を行った. その結果, ミトコンドリア上に局在するBak凝集体の超解像画像を得ることに成功した.課題2では,神経軸索誘導に必要なDCCリセプターの光制御技術の開発に取り組んだ.DCCの多量化を光照射によって誘導するタンパク質プローブ,PA-DCC (photoactivatable DCC) を設計した.光誘導には,青色光を吸収することによって多量化するタンパク質CRY2 (Cryptochrome 2) を用いた.培養細胞において,開発したPA-DCCが青色光照射によって多量化し活性化することを確認した.その多量化は,光照射強度と時間に依存して増加することを実証した.課題3では,GPCRの一つではるFPR1レセプターに焦点をあてて,その特異的な阻害剤探索を行った.細胞内カルシウム濃度を検出するスクリーニング用細胞,ならびにβアレスチンとFPR1との相互作用を発光検出するスクリーニング用細胞を樹立した.東大化合物ライブラリーからスクリーニングを行い,FPR1特異的な阻害化合物を10種類取得することに成功した.
1: 当初の計画以上に進展している
課題1では,Bakの超解像イメージングによる分子数計測技術を早期に確立することができ,現在そのデータ解析の段階にある.興味深い生物学的な知見も得られており,期待以上の成果が得られている.課題2では,Aktの光制御技術の開発に早期に成功して論文にまとめることができた.さらにその応用発展研究に大きく展開しており,DCC光制御系も計画より早く成果が修められる予定である.
課題1では,開発したTERRA検出プローブを用いて,生細胞の核内におけるTERRAの動態を解析する.動径分布関数および拡散係数を用いて,TERRAの核内分布や運動を定量的に解析する.さらに,TERRA結合タンパク質を蛍光ラベルして,TERRAとそのタンパク質との時間的・空間的変化を追跡する.課題2では,Akt光制御技術の応用展開をはかる.PA-Aktを肝細胞や脂肪細胞に発現させ,異なるAkt刺激を加える.その時のAkt下流のタンパク質リン酸化および遺伝子発現を解析して,細胞種特異性ならびに細胞内シグナル活性の時間変動の違いを考察する.またPA-DCCシステムでは,光によって神経軸索の伸長方向が制御できることを,培養細胞と線虫を用いた個体で実証する.課題3では,同定したFPR1阻害剤の作用機序を調べるために,Gタンパク質の活性化を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により定量評価する顕微鏡システムを開発する.多細胞からのFRETシグナルを,リガンド濃度依存的なGタンパク質の活性評価が可能なシステムを構築する.βアレスチンシグナルとGタンパク質シグナルの強度の比較を定量解析する新たな分析技術を開発する.
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (42件) (うち国際学会 21件、 招待講演 8件)
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