研究課題/領域番号 |
26220807
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
城 宜嗣 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 主任研究員 (70183051)
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研究分担者 |
澤井 仁美 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (50584851)
杉田 有治 独立行政法人理化学研究所, 杉田理論分子科学研究室, 主任研究員 (80311190)
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研究期間 (年度) |
2014-05-30 – 2019-03-31
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キーワード | 酵素反応 / 一酸化窒素 / 環境科学 / 呼吸酵素 / 分子進化 / 脱窒 / 窒素循環 |
研究実績の概要 |
一酸化窒素還元酵素NORをノックアウトした緑膿菌は、脱窒条件下(硝酸イオン存在、嫌気条件)では生育しなかった。そこに、NORをコードしたプラスミドを導入すると、緑膿菌は生育できるようになった。すなわち、緑膿菌をホストとする、NORの発現系構築に成功した。このin vivo分析系を用いて、酵素活性が低下したNOR変異体のハイスループットスクリーニングが可能となった。 さらに、NO産生酵素である亜硝酸還元酵素とNORとの複合体の生理的意義を確認するために、両酵素の相互作用部位にあたる部位を変異させたNORをこの発現系に導入したところ、緑膿菌の生育が遅くなり、このNiR-NOR複合体がNOを細胞内に拡散させないシステムである事を確認した。さらにNORとNiRへの電子供与体タンパク質である、アズリンあるいはチトクロムc551との三者複合体の結晶化を開始した。 NORの酵素反応中に現れる短寿命(ミリ秒)反応中間体の電子構造、配位構造を明らかにすることのできる、時分割赤外分光測定器を完成させた。さらに、不可逆な反応で現れる反応中間体のスペクトル測定を可能とするために、微量の試料を用いてスペクトル積算が可能な試料系の作成にも成功し、テスト実験をおこなった。SACLAを用いて、この反応中間体の結晶構造解析を行う事をめざして、①溶液状態で、caged NOによる反応中間体生成を検討し、さらに②caged NOが混存するNOR結晶の作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑膿菌をホストとするNOR発現系の構築成功は大変大きな成果である。これにより、今まで大腸菌をホストとしては成功していなかった変異体の調製が可能となった。 さらに、この発現系を用いれば、NiR-NOR複合体の生理的な意義の解明も可能となる。 反応中間体の構造・電子状態解明は、時分割分光装置の作製により、今後着実に進むであろう。 微生物におけるNO消去酵素の一般的な知見と、呼吸酵素の分子進化を論ずる上で重要となる、キノール依存型NOR(qNOR)の構造解析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には今年度の方向をで研究を進め、その進展を加速する。 緑膿菌をホストとするNOR発現系を用いて、①プロトン輸送、②電子輸送、③NO配位などに関わるアミノ酸残基を変異させた変異体を調製する。それらの、機能解析、分光解析、構造解析を進める。構造解析に関しては、まずは、野生型NORの結晶化と構造解析を成功させ、天然型NORと同じである事を確認する。これらの成果を基に、①NO還元反応の分子機構解明、②呼吸酵素の分子進化の議論、③NiR-NOR複合体の生理的意義の解明につなげていきたい。 反応中間体の構造・電子状態解明は、時分割赤外分光装置を用いて、様々な条件での酵素とcaged NOとの反応を追跡する。並行して、SACLAでの反応中間体構造解析の準備も進める。 キノール依存型NOR(qNOR)の構造解析は今まで以上に力を注ぐ。
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